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多様性が「奪われ」つつある2025年、いかに多様性迫害が止揚されたか

このゲームを一言でまとめてしまうとこういうことだと思う。つまり Life is Strange 1・2 が提供してくれた、元々あった多様性(DEI)が生み出す体験が否定されつつある現在、当の DON'T NOD はこの文化闘争のバトルフィールドから逃げることなく正々堂々立ち向かい、新しい形でふたたび多様性が生き残る道を示してくれたということだ。われわれ消費者が祝い感謝すべきはこの政治的危機の時代にこの DON'T NOD という不屈の会社が今このときにこのゲームを出してくれたことだ。もちろん誰もトランプが勝つなどと予想していなかったわけで、DON'T NOD もそのタイミングを狙っていたわけではないのだが……。
とはいえあまりポリティクスな話をしていても仕方がないのでゲームの話をしたい。

(それにしても「ノー・ポリティクス」が合言葉の DEI アンチの「ゲーマー」(蔑称)が、例えばロシア製の MiSide などを「敵国のゲームだから」という理由で敵視するようなポリティカルな現象が発生するのはなぜなのだろう?)

ありえるかもしれない大人としての体験

ゲームは40代にさしかかった女性が久々に10代を過ごした故郷に帰ってくることから始まる。その主人公の女性にはこの地に戻ってきたのもなんらかの事情があるようだ。どことなく馴染みのある地元のバーで、主人公はかつての友人と再会を果たす。その友人には主人公と会うべき理由があった。それは忘れ去られるべき忌まわしき「過去」から送られてきた謎の箱のためであった。
ゲームはそこから現在と過去の描写を交互に繰り返すことになる。ここで面白いのは、プレイヤーがつむいだ過去での体験が現在の友人との関係にも影響を及ぼす点だ。その視点が交互になるシステム自体はそれほど新しくはないだろうが、過去で誰と仲良くなったかが現在の人間関係に影響して、実際に行動も変わってくる点はゲームとして面白い作りといえるだろう。

ありえなかった青春の追体験

これは誰にでもありえるようでありえなかっただろう奇妙で異常な青春の物語だ。ミシガン州の貧困田舎に住む主人公たち女子4人組は、ちょっとした揉め事に立ち向かってから仲を深め、ガレージで大麻を吸いながら音楽バンドとして破滅的な演奏の計画をしたり、いかにも田舎らしい森の奥まで遊びに行ったりする。
ここで本作において特徴的なのは主人公の持つ8ミリカメラである。主人公はカメラモードで一定のテーマ(公園の遊具やバンドのミュージックビデオなど)に沿う動画を録画でき、そのシリーズを完成させるとひとつの映像作品として閲覧できるようになる。これは容姿もコミュ力も劣っている主人公が仲良し組に受けいられた理由付けとしてもうまく働いている。こうしてどこか不思議な魅力を持つ主人公は仲のよい友人の誰かと自然と恋愛関係に至ってゆく。
このように途中まではまるで『スタンド・バイ・ミー』の青春物語のような実に心地よい体験が描写される。だが、そこで彼女ら4人組は因縁の小屋とその近くに開いた謎の穴、「アビス」を発見する。物語はそこから動き出し、世界はだんだんと不思議な方向へ向かっていく。

ありえざるべき青春の総括

現在における旧友との会話から、過去がどこか恐ろしげなものであることがだんだん明らかになっていく。だがそれが実際に恐ろしく、まさに封印すべき点だということはゲームが終盤に至るまで明かされることはない。それは実際に恐るべき事態であり、そのことには仲間たちとともに発見した小屋と「アビス」の不思議な力が大いに関係している。しかし実際にそんな力があるのかは非現実的な話であり、信じるか信じないかはプレイヤーに委ねられている。そしてゲームの最序盤に友人より渡された箱がいかに忌まわしい過去を超えて現在に届いたか、一体中身はなんだったのか――そこは自分で体験してほしい。

多様性の世界を描く試みが奪われないために

結論として、このゲームはシナリオやゲーム性として極めて優れたアドベンチャーゲームであるとともに、2025年以降の多様性のあり方を示すべきレガシーとして記憶に残されるべきゲームだ。ただレビューを読んで終わるべきゲームではなく、反多様性の嵐を生き残った――そう、生き残るべきである――ゲームとして、未来に伝えるため、記憶に残すため、記録に加担するために今プレイすべきゲームである、と訴えたい。そのためにこうして言葉にした次第である。
Posted 26 July. Last edited 26 July.
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特別なアカトシュとメエルーンズ・デイゴンの武器・鎧はレベル1からいきなりデイドラ・グラス級の装備が手に入ってしまうバランスブレイカーだし、しかも見た目がこの19年何してきたの? と言いたくなるぐらい特別にダサい。馬鎧セット(デジタル)は以前と同じ馬鎧セット(デジタル)なので有料で売るものではない。ゲーム本編とは関係ないデジタルアートブック & サウンドトラックアプリが目的でなければ買うべきではない。
Posted 30 April.
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伝説が始まる……?

The Elder Scrolls: Arena は知る人ぞ知る、TES シリーズ最初の作品。
1994年というメディーバルな時代に MS-DOS(といわれてもよくわからないが、古い OS らしい)用ソフトとして作られたものをエミュレーターを使い現代の PC にそのまま移植したのがこのゲームだそうです。
つまり、すべてが古い。なにひとつ変わっていないその古さ。30年前そのままの古さです。

古いことは古い。しかし、ゲームシステムの話をすると、その古さがシンプルなデザインという方向性に意外とよく働いていて、特に次作の TES II: Daggerfall などと比べるとかなり遊びやすい出来になっています。
具体的には、定義としては 3D ゲームではあるものの、システムが単純すぎるので、三次元とはいってもまだ高低差の概念があまり意識されておらず、歩くのはまっ平らな地形で、階段を使って1階2階、地下1階、といった具合で移動する仕組みになっているため、グラフィックが古くても地図が読みやすく意外と遊びやすいのです。この点は現代人たるわれわれがプレイするにも障害にならないためおすすめしやすいポイントです。I: Arena、II: Daggerfall は DOSBOX エミュレーター版のフリーウェアとして公式で公開されているのですが、公式のものはいろいろ細かい問題があり、最古参最大手 TES ファン Wiki の Unofficial Elder Scrolls Pages[en.uesp.net] で用意されたバージョンを遊んだほうがよかったりするのですが、Steam 版は DOSBOX のエミュレーターもいろいろ設定済みらしくダウンロードしたらすぐに遊べたので、Steam 版で遊ぶ点で不便なこともおそらくないと思います。

ストーリーについてはどう触れたものか考えましたが、これはなんというか、まだ「われわれの知るいわゆるエルダースクロールズ」ではないような感じがします。以下、2023年にもなってこんなゲームをやろうかと考えるような人は TES の基本的なことはだいたい承知しているだろうという前提で、用語の説明などは極力省いて述べます。
タムリエルの世界地図と皇帝ユリエル・セプティム7世の名前だけは現在も残る設定として存在するのですが、それ以外はまだ全体的に TES ではありません。皇帝がジャガル・サルンという悪のバトルメイジに誘拐されなりすまされて暴政が行われた結果、世は乱れ、世界はもはや闘技場、すなわちアリーナと化した! というのが筋書きなのですが、そもそも皇帝の政治はシロディールにしか力がほぼ及んでおらず(シロディールはたしかに雰囲気がどことなく暗いが)、シロディールも含めて全体的にそこまで世は乱れていないので、タイトルの意味がよくわからない。
ゲームとしてのストーリーもきわめてシンプルで、まだあまり特徴がない帝国の各自治州(スカイリムとかモローウィンドなどの帝国の従属国)に一州ずつファストトラベルし、キーアイテムの欠片をひとつずつ集めていくというものです。そこに自治州独特の要素などはなく、まるで変わらない8州にお使いに走るだけの話です。なにしろカジートやアルゴニアンですら人間の姿をしているありさまでして、そこに帝国各地を旅する喜びはありません(一応なぜカジートが人間のような姿なのかは生まれと月の満ち欠けが容貌を変えるもので、III 以降に登場する猫人間はシュセイ・ラートという旅好きの種族だ、などという思いっきり後付けの設定がありますが、そんなものはこの時代に設定が固まっていなかった言い訳に過ぎません)。

ではこのゲームのなにが正しいのか、なぜ TES ファンがこのゲームをやらなければならないのか、という話になりますが、それはただ皇帝ユリエル・セプティム7世が収める帝国をプレイヤーがはじめて救うことができる、その機会をわれわれに提供してくれているからです。はっきりいいますが、エルダースクロールズというゲームは I: Arena から始まり IV: Oblivion で終わったシリーズです。このエルダースクロールズというシリーズは本来、第3紀最後の皇帝ユリエル・セプティム7世の一代記として作られた物語であり、各ゲームの主人公はこの皇帝に仕え、その意志(I から III)、あるいはその遺志(IV)を実現するための存在にすぎません。プレイヤーの操作するキャラはその結果英雄になっただけであり、エルダースクロールズの本物の「主人公」とはユリエル・セプティム7世というひとりの人物なのです。V: Skyrim というのはあくまでこのシリーズが売れすぎたために無理やり続けるため、第4紀まで200年も飛ばしてユリエル7世亡き後の新たな世界を構築した話なのです。

などと長々と私論を垂れ流しましたが、要約すればつまり、今どきのゲーマーらしく V: Skyrim しかやらない、TES の歴史など知る必要はない、ということであればこの古臭すぎるゲームをやる必要はありません。しかしせめて IV: Oblivion ぐらいは今からでもやってみて、エルダースクロールズとはどういうシリーズなのか、弱い人間ながらも高潔な意志をもって必死に帝国を治めてきたユリエル7世という人物のことを少しでも知りたければ、このゲームをやってみてもいいかと思います。ゲームは単純でそれほど難しくはない。ユリエル7世もエンディングぐらいにしか出てこない。それでもあなたはユリエル7世がはじめてこのシリーズに生まれいでた姿を見ることができる。このゲームをやるかどうか、それはそのことに価値を見いだせるかどうかである、と断言できます。

偉そうにシリーズを語っていますが、わたしも V: Skyrim ではじめて The Elder Scrolls シリーズを体験した人間です。その体験があまりに感動的だったため、わたしは I: Arena から TES を徹底的にやりつくそうと考えたのです。ですから、このゲームをやるかどうか、楽しめるかどうかはあなたの TES 歴とはあまり関係ありません。V しかやっておらずもっと深く TES を知りたい、IV: Oblivion という物語的には間違いなく TES 史上最高傑作にしてユリエル・セプティム7世最期の作品を遊ぶにあたって一番の精神状態に持っていきたい(補足すると、わたしは V をやったあとにすぐやりたくなるはずの IV をあえて遊ばず、I から IV までシリーズの順番にプレイするという遊び方をした結果、IV という最高傑作を一番楽しめる状態で遊ぶことができました)、あるいは IV をプレイ済みでもユリエル7世および彼の治めた帝国についてもっと知りたい、親しみをいだきたい、という方にはぜひおすすめしたい作品です。何周も遊べるゲームではないですが、一周さくっとプレイして TES 第一作の雰囲気を味わってほしい。わたしとしてはそういうことです。よろしくお願いいたします。

一応おわりに書いておきますが、このゲームを日本語化する手段はなく今後も日本語で遊ぶことはまずできないかと思います(II は可能性がありますが、I はなさそうです)。ただシステムは単純だしストーリーはそれほど重要ではなく軽い日本語訳などはウェブ検索で見つかると思うので、英語が苦手でもそれほど気負いせず遊べると思います。たかが言語の問題でためらうぐらいならぜひ一度遊んでみてください。
Posted 9 July, 2023. Last edited 11 July, 2023.
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8.3 hrs on record (8.1 hrs at review time)
BABA IS NOT YOU
YOU IS WEAK
YOU IS SINK
YOU IS MELT
YOU IS FALL
YOU IS EMPTY
YOU IS NOT WIN


---

今までフルプライスのパズルゲームからインディー系アドベンチャーゲームなどに含まれるミニゲームなどを含めれば何十何百ものパズルゲームをやってきた経験がありますが、このゲームを遊んでみたとき、はじめて「これは勝てないな」と素直に思いました。
自分の思考形態に合っていない、とかそういう言い訳ができたら許された気持ちになれますが、「負けた」と思ってしまった以上これはわたしの敗北です。そこに言い訳の余地はない。

負けた言い訳ではないけれど、このゲームについて語ることはできるかもしれない。
このゲームは一言でいうと、まるで柔弱な外面で人を挑発し、寄ってきた獲物を言葉の刃だけで退散させる、まさにディオゲネスの思考のようなゲームです。
パズルゲームが特段好きというわけではないがやってみるか、そう思ってつい遊んでしまうと自尊心を大いに損なう可能性があります。
なぜならパズルが非常に難しいからです。難しさという刃があなたの自尊心を容赦なく斬りつけるからです。その刃を切りつけてくるのは誰か。それは BABA という白くふんにゃりとした、あえて形容すれば犬のような生物です。要するにこの生命体はありたちからしてディオゲネスの抽象化であり具体化なのです。

このパズルは難しい。一晩寝かせて考え直してみよう。難問の壁にぶち当たった際に多くの人々が頼る解決策ですが、寝て覚めてまた挑んだときに二の太刀の刃を食わされる。そういったことが多くあります。なぜならパズルが非常に難しいからです。
このパズルは解けない。解けるパズルから解いていこう。そうして進めていくと、次のマップのアンロック条件は最初のうちは緩いので、それなりに進めていくことができます。
とはいえゲームとしては当たり前のことですが、進めば進むほど難しくなってくる。クリアできるパズルの数も減ってくる。そして能力の足らないものはついに次のマップへ進む権利すら得られなくなる。序盤に妥協したのは結局は自分の能力のなさなのだ。一度諦めたものが前に進むことができるか。人や獣の生のありかたが問われているようだ。かの大王アレクサンドロスを含め、かつてディオゲネスに勝てた人類は存在しなかった。これはそのぐらいの水準を要求するゲームとなっています。

一般的なパズルが得意という数学的な論理的思考に自信のある人にはぜひこのゲームで自分の能力を試してほしい。
あるいはミクロ的な視点から世界の成り立ちについて深く考えることができる哲学者の方にも試してほしい。BABA の世界はきわめて些細な違いで虚無から勝利まで大きく変化するので、主語・動詞・補語の関係性のなかにある可能性を見いだしてほしい。

文字数の関係上、意味の希薄なレビューとなってしまったが、パズルの基本的なルールなどは日本語 Wiki などにまとめられているのでそちらを参照してほしい。ここでわたしが問いたいのはあなたの覚悟なのです。あなたは BABA ですか? あなたは勝てますか? このゲームは究極的にはそれにつきるということです。健闘を祈ります。
Posted 19 June, 2023. Last edited 19 June, 2023.
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0.2 hrs on record
Originally posted by Louis Antoine de Saint-Just:
On ne peut point régner innocemment : la folie en est trop évidente. Tout roi est un rebelle et un usurpateur.
No one can reign innocently: this insanity is too obvious. Every king is a rebel and usurper.
人は罪なくして統治しえない。かかる狂愚は明白である。あらゆる王は叛徒であり簒奪者である。

Pro-révolution
  • You can see the tyrant guillotined.
  • 暴君がギロチンにかけられるところを見られる。
Contre-révolution
  • Historical Revisionism: Bourgeoisie wasn't, falsely as the opening scene stated, winner of the Revolution until the Thermidorian Reactionaries had usurped the Republic (at least after the Revolution of August 10).
  • 歴史修正主義: オープニングシーンの主張は欺瞞であり、ブルジョワジーはテルミドールの反動で共和国が簒奪されるまで勝者ではなかった(少なくとも8月10日の革命以降は)。
  • Historically Inaccurate: Louis the Citizen was guillotined at 10 a.m., and before that dragged to the Place of the Revolution in the morning, not to somewhere on a hill nor at midnight.
  • 歴史的に不正確: 市民ルイは朝方に革命広場に連れていかれて午前10時にギロチン刑に処されたのであり、どこかの丘でも真夜中でもない。
  • Ignorance and Insincerity make a game dull: If you want to make a game on the late 19th Century of France, use Didot as your font and do not use insipid Gutenberg (even Mercule de France published under the Ancient Régime had used Didot).
  • 無知と不誠実がゲームをだめにする: 19世紀後半のフランスを舞台にしたゲームを作りたいのなら、せめてフォントはありきたりのグーテンベルクではなくディドを使え(旧体制期の『メルキュール・ド・フランス』でさえディドを使っていた)。
  • As a matter of fact: Simply it isn't fun enough to be worth $1.
  • 真面目な話: 単純に100円払う価値があるほど面白くない。
1/21. Would love to guillotine the tyrant again.
Posted 23 June, 2018. Last edited 24 June, 2018.
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3.6 hrs on record
一般にポイントアンドクリック式アドベンチャーゲームは物語寄りかパズル寄りかでゲーム性が二分されるが、この Through Abandoned 2. The Forest はかなりパズル寄りのゲーム。なぜか雪山で寝ていた主人公が目を覚ますと目の前には扉がある。入ってみるとその先は不思議な機械仕掛けでいっぱいの森で、主人公はパズルを解きながらその森、ひいては今いるその世界の謎を解き明かしていく。

率直にいって、物語性が薄すぎていまいちのめり込めなかった。P&Cゲームでは物語とパズルのバランスが重要で、どちらかに偏りすぎた場合、その偏った側の成分がよほど優れていなければプレイヤーに退屈を感じさせてしまうが、このゲームのパズルはただただ難解かつ面倒で、個人的には解いていてそこまで楽しいものでもなかった。いや、面倒くささをまったく感じさせないP&Cというのはなかなかお目にかかれないものではあるんですが……。
とはいえ定価は300円と安価だし、いかにもおカネがかかってなさそうな手書き風のアートワークも素朴で味があり、独特の雰囲気を感じさせる。物語はあってないようなものなので英語ができなくても問題ない(パズルを解くのにも必要ない)し、周回して実績コンプ(全シークレット回収)を狙っても(攻略動画を参照すれば)数時間でさくっと終わるゲームなので、お手頃かつ難解なパズルP&Cをお求めの方にはおすすめできそう。
Posted 4 January, 2017. Last edited 4 January, 2017.
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10 people found this review helpful
11.2 hrs on record (11.2 hrs at review time)
なんというか、物語はそれなりに面白いのですが、読後感がすっきりしない話でした。

ある朝、主人公は見知らぬ部屋で目覚める。どうやら頭でも打ったらしく昨晩の記憶がない。昨晩どころか過去を思い出そうとするとひどく頭が痛む。彼を介抱してくれた少女(バナーに描かれているヒロイン)によると、過去を知ろうとすることは罪らしい。いわく、この世界は神が作りたもうた完璧で争いの一切ない平和な世界だという。そうではなかった昔のことなど知るべきではないというわけだ。そんな世界がありうるのかと疑問に思う主人公。しかしまたもや少女によると、疑問に思うことはむち打ち刑に値する罪だと聖典にあるらしい。なぜそれが罪になるのか考えること自体が罪なのだ。主人公はなにかひっかかるものを覚えながらも、信者の義務という朝の礼拝に参加する。そこでほんの些細なことから騒動に巻き込まれ、主人公は聖典に違反した咎で教会から命を狙われる身となる。主人公は仕方なしに追っ手から逃げながら、この悪夢のような町から脱出するために、手掛かりを求めるうちにこの世界の謎と対峙することとなる。

あらすじはこんな感じですが、あなたはここからどういう物語を想像しますか?
基本的に宗教的ディストピアの世界観から練られた本筋は的を外さず面白いのですが、最終的な物語の回収の仕方が雑に思えました。いうなればループものでループを解決せずに終わるというか。ほぼネタバレに近いですがそんな感じです。3時間やそこらで終わるゲームならそれでもいいのですが、私の場合は自分の英語力のなさもあいまってクリアに10時間以上もかかってしまったので、ここまでやってきてこれで終わりといわれるとどうにも高まった気持ちのやり場に困るような話でした。

また最近はこの手の「アドベンチャーゲーム」にはミニパズル要素がもはや必須となりつつある風潮で、それ自体は一向に構わないのですが、このゲームのミニパズルはどうにもしっくりこないものがあります。答えがあからさますぎたり、仕掛けがあまりにくだらなかったり、要するに解いてもこれといったカタルシスがないのです。

低価格のインディー作品でシナリオもそれなりの長さがあるのにしっかり脇役も含めてボイスアクティングがついていたり(中国語なので演技の上手い下手は私にはわかりませんが)、丁寧で美麗なキャラクターイラストや雰囲気に合った上質な音楽が用意されているところは評価に値します。背景画についてはキャラ絵の細密さといまいちマッチしておらず、もう少し頑張れたのではないかと思わなくもないですが。それから、テキストの英語もなんというか、最大限やわらかい表現でいえばもう少し校正が必要に思えます。仮に日本語版が出るとして、あるいは有志が翻訳するとしても、この英語版からの重訳ではあまりいい結果が期待できません。原語である中文版からの翻訳が必要に思えます。

上に挙げたとおりよい点もそれなりに多いので、「おすすめしますか」と聞かれて「いいえ」を押せるほど否定的にはなれませんが、うーん……。点数化するなら5.5/10点といったところでしょうか。
Posted 10 November, 2016.
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3.2 hrs on record
「一見(コンセプトアートなどから素直に想像)すると普通のゲームだが、実は隠された大きな秘密が……」といった感じで本筋を大胆にひっくり返すプロットは、どうも最近インディーゲーム界隈の隅っこのほうで静かに流行しているらしい。代表的な例としては Dr. Langeskov(略) と Pony Island の2作だろうが(後者は筆者未プレイですが)、これらはあくまで成功した例だ。

そうした例と対照的に、Scapeland はいわば失敗に終わった「ひっくり返し系」の例として記憶されるべきゲームだ。
この手のゲームでネタバレは禁物だとお叱りをうけるかもしれないが、とにかくそのネタの部分がどうしようもなくダメダメなので、バレでもなんでも書かざるをえない。このことは先にお断りしておく。ようするに、Dr. Langeskov のレビューのようにノリノリでネタに乗っかってしまっては、「だまされた」ユーザーにかえってお叱りをうけかねない程度の出来なのだ。

Scapeland はトレーラーやスクリーンショット、商品紹介文などをみれば「ほのぼの農業ゲーム」の類が想像できるようにされている。実際ある時期まではほのぼの農業ゲーム一般にみられるルーチン(収穫、種の購入、種まき、収穫、剰余利益で上ランクの種を購入……)をこなし、時を進めていくことになる。だが順風満帆にみえたほのぼの農場は突如として謎の軍隊に襲われ、主人公は逃避行を余儀なくされる。謎の軍隊の追跡を逃れ、どこかも知らぬ先へと逃げ続ける。これがこのゲームに隠された本筋であり、ゲーム本来の楽しみを損ないかねない重大なるネタバレでもある。とはいえ、ネタバレといってもたいしたネタがあるわけではない。主人公がなぜ追われているのか、なぜ逃げねばならないのか。主人公を追う謎の軍隊はいったい何者なのか、何が目的なのか。こういった謎は一切明かされることがない。しかしそれはあまりに退屈で、謎を追求したい好奇心よりも話の展開に飽きる方向に早々に天秤が傾いてしまう。

なぜここまで堂々とネタバレをするかというと、この本筋のステルスゲームがどうしようもなくつまらないからだ。実際のところ、ステルスゲームというほど上等なものではない。黄色く表示されている兵士の視界に入らないよう動き、ときには物陰に入って巡回する兵士の視界から隠れたり、反対側に石を投げて兵士の視界を他方に向けたあいだに通り抜けたり、立ち止まって動かない兵士の背後を足音を立てないよう歩いて通り抜けたりといった具合で、敵の無力化などこちらから攻撃的に抵抗できる手段はない。言い換えればオブジェクト回避パズルのようなものだ。これがただひたすら退屈なうえに無駄に難易度が高く、チェックポイントもないので失敗して最初からやり直しの順を繰り返すとたちまちストレスが爆発する。

苛立ちを抑えながらもかなりの忍耐力を動員して最初のステルスマップを抜けると、次は3レーンの道を左右への移動とジャンプ・スライディングを駆使しながら走り抜けるアクションシーンに移る。これは反射神経が要求され、筆者のなによりの苦手分野ではあるのだが、似非ステルスゲームに対する苛立ちからの解放感も手伝って、前のマップよりはよほど面白く、ここへきてこのゲームに対する私のなかでの評価が一変したかに思えた。なるほどこういう形でさまざまなミニゲームに順番にチャレンジさせるのは実験的で面白い試みだと。しかしその期待はこのステージをクリアしたのちに見事に裏切られた。次のステージはまたもや似非ステルスゲームで、そのステルスの難易度もチェックポイントなしでクリアさせられる1マップの広さも増し増しであった。ここで10回ほど失敗を繰り返し、ついにステージの最終関門らしき場所までたどり着いたところでまたもや失敗して開始地点に戻された私はこのゲームをあきらめることにしたのだった。

結論としては、このゲームはそもそも農業ゲームではないので間違えて買ってはいけないし、タグに付与されているような「実験的」な面としてみても明らかに失敗しているので、私としてはこのゲームをおすすめすることはできません。お目当てに応じた別のゲームを買いましょう。(画像付きレビュー全文[invalid-gamer.blogspot.jp]
Posted 5 October, 2016. Last edited 5 October, 2016.
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3.1 hrs on record (2.8 hrs at review time)
Gone In November は暗く救いのない、筋の難解な短編アドベンチャーゲーム。
主人公は急性白血病および精神錯乱と診断され、数年にわたって治療を続けるも、高額の医療費のためについに預金の底がつき、これ以上の治療を望めなくなり、医者に余命数日という宣告を受けたところで鎮痛剤のみを処方されて家に帰される。家に待つものは誰もおらず、やることといえばサボテンの手入れぐらいのもの。眠りにつけば、精神の病からくるものなのか、ひどい悪夢をみるばかり。その悪夢のなかで絶えず思い出すのは「彼女」のことだ。悪夢のなかで主人公はひたすら空間を歩いていくが、いったい過去になにがあったのか、過去の記憶が思考を代替する文字となって画面に流れるように表示されていく。

文脈の不鮮明な文章が途切れとぎれに現れては読み終える間もなく消えていく。このゲームの難解さはこの点からきている。レビューやフォーラムの投稿などでもその難解さは繰り返し指摘されており、私にとっての外国語である英語だからというわけでもないようだ。絶えずスクリーンショットを撮り、あとからじっくり見直すことで文脈の把握を試みても、やはりひどく難解で筋をとらえがたい。とはいえ、死にゆく人の狂気などというものはそんな脈絡のないものなのかもしれない。
しかしこのゲームの味として、こうした狂気の内面描写がどこか美しく感じられるのだ。心を病み、過去になにか大きな悔いを残した人が、あと数日の命といわれて何を思うか。きわめて挑戦的なテーマだが、しかしアドベンチャーゲームのかたちにうまく流し込めているのではないかと思う。

ひとつ残念なのはボイスアクティングがないことで、ただひたすら長い文章を自分の目だけで読まされることがやや苦痛だということは認めざるをえないところだ。とはいえ音声があったらあったでまた違ったゲームとなっていただろうし、今のこのゲームのなんともいえない寂寥感からくる美しさが損なわれていたかもしれない。それに、そもそもが98円のゲームなのでそこまで求められるものではないだろう。

翻訳の方法は簡単そうなので、個人的に日本語化に挑戦してみたいとは思っているが、それぞれの言葉の文脈を正確に理解しなければ翻訳もおぼつかないので、私にそれがこなせるかはいまいち自信がない。なので私の仕事にはあまり期待しないでほしいが、ともあれ現段階でも英語を読むだけのやる気があり、死や心の病といった問題に関心のある人にはぜひおすすめしたい。(元記事[invalid-gamer.blogspot.jp]

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追記: テキストの日本語翻訳は一応完了しました。こちら[invalid-gamer.blogspot.jp]にて公開しています。
Posted 28 September, 2016. Last edited 2 December, 2016.
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1.4 hrs on record
Originally posted by 研究社 新英和中辞典:
pointless
形容詞
1 先のない,鈍い.
2 無意味な; 無益な,要領を得ない.
It's pointless to try to persuade him. 彼を説得しようとしてもむだだ.
3(競技で)無得点の.

Pointless はその名にふさわしく、恐ろしいまでにpointlessなゲームです。
ゲームを起動するとまず PRETENDO というロゴが現れますが、デベロッパーの名前などとはまったく無関係であり、往年の携帯ゲーム機のパロディと思われる(ニセテンドーとでも訳すべき?)pointlessなジョークです。

ゲーム内容はというと、Steamストアページには Clicker タグが付いていますが、一般にいう Clicker(Adventure Capitalist や Clicker Heroes など)とはまったく性質の異なるもので、おそらくあまりのゲーム内容のpointlessぶりに、ほかに形容しようがないためにつけられたものと思われます。では実際にどういうゲームかというと、画面に現れたドットをクリックするだけのゲームです。本当にそれだけなのでそうとしか表現しようがなく、なるほど Clicker とは物は言いようだなと思います。

画面に現れたドットをクリックするとポイントが増え、そのドットは爆発して増殖します。その繰り返しであり、まさにクリック以外にやることがありません。このゲームをプレイしていると、Clicker とはいったい何だろうと考えさせられます。一般にいう Clicker はクリックして稼いだポイントで倍率を高めたり自動化したりする要素があり、正確にはインフレ放置ゲーとでも呼ぶべきもので、本当にクリックしかすることがない Pointless こそまったき Clicker なのではないでしょうか。いや、本当になんなのか。ときどきクリックを一時的にパワーアップさせるドロップアイテムが出てきたり、累計獲得ポイントを競うグローバル・リーダーボード機能などもあるのですが、本当にだから何なのかという感じです。pointlessです。

しかしどんなにpointlessなゲームでも、きっとみっつぐらいはよいpointがあるはずです。数えてみましょう。まず第一のpointとしては、全実績の解除が簡単なことでしょうか。これで実績取得まで難しかったら発狂ものですが、ガイドに従えば15分ほどで全実績を解除できます。よかったですね。第二のpointは、定価が98円と安価な割に、Steamカードの平均額が比較的高いことでしょうか。なぜだかはよくわかりませんが、とにかくカードを売れば30~50円ぐらいは返ってきます。よかったですね。とはいえこれは記事執筆時点の話なので、そのうちこの第二の点もpointlessになるかもしれません。第三のpointまでみつけようと思うとかなり苦しくなってきますが、98円という安価かつ徹底してpointlessなゲームなので、嫌いな友人にいやがらせとしてギフト爆撃に使用できそうなところでしょうか。ある程度内容があり、ジョークとしても通じる Mountain などと違って本気で嫌われそうですが、その覚悟のある方にはおすすめできそうです。(pointlessな画像付き元記事[invalid-gamer.blogspot.jp]
Posted 31 August, 2016.
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