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言葉が通じない人とのコミュニケーションの中で言葉の意味を2者間で作り上げていき、その作業を通していく中で、プレイヤーにとってのストーリーが浮かび上がってくる、そんなゲームかと思って購入した。

言葉というものはコミュニケーションツールであり、ひとつひとつの言葉の意味はコミュニケーションを取っている人たち同士の相互作用でなりたつ。そこには即時性、応答性の高いコミュニケーションが必要になるのだけど、このゲームでは向こうのほとんど一方的な話しかけを聞くこと、そしてこちらが指差したものについてそれが何かということを一意的に答えられることのみが行われる(そこからコミュニケーションが発展したりはしない、返答が終わるとそのやり取りはそこで終わりになる)。言葉はサンプルとして一方的、一意的に与えられるだけ、……この時点でこのゲームがコミュニケーションや言葉をテーマにした作品でないことがわかる。なのでストアの紹介を見てそうしたものを期待した人には決して「おすすめしません」。

たとえば目が覚めたら異世界で、目の前に知らない人がいた、そして会話が始まった、という場合、そこでその2人の間でしか通じないような言葉の意味が発生するはずだ。その言葉そのものは向こうの世界の言葉であっても。たとえば起きたときに「枕」が目の前にあったから、「枕」について意思疎通を図ろうとする。そしてそれが初めて意思疎通できた言葉になった場合、それ以降「枕」はその当事者の間で意思疎通や親愛を表す表現になる。こういうのがコミュニケーションの楽しさであり、即時対応的に意味が生まれたり変わったり消えたりする言葉というものの面白さである。このゲームではそうしたコミュニケーションの楽しさ、言葉の面白さは一切ない。ただ素材を投げ込まれる機械学習AIのようにサンプルを投げ込まれるだけだ。機械学習するAIの気分になれるというのはなかなかない体験でもある。

そうこうするうちに7割くらいの単語の一意的な意味が理解できるようになるだろう。ゲーム内での初日、プレイ時間では30分くらいでその状態になってしまう。しかしそこで単語習得のペースが止まってしまう、サンプルがそれ以上ほとんど追加されないから。

異世界の言語でもサンプルが大量にあれば理解する方法はいくらでもある。それが人間の言葉である以上、人間の能力の限界に言葉が制限されるからだ。たとえばこの地上には関係代名詞が8種類以上ある言語は存在したことがない(おそらく多くの人の短期記憶のキャパが7つであることに由来する。あ、細分して8種類以上ってのはなしで)。接続詞のパターン(順接・逆説・並列・補足・対比・転換とかいうやつ)も世界中のどんな少数部族でもそのバリエーションはだいたい決まっている。だからそのあたりがとっかかりになる。ほぼ一方的に投げ込まれるサンプルであったとしてもね。しかしこのゲームではサンプルが少なすぎて(しかも一方的に投げ込まれるだけなので)、そもそも何が接続詞らしいのかすらわからない。接続詞なのか、一般的な言葉なのかが判別つかない。

そこで行き詰まる。そしてぼんやり単語リストを眺めていると、このゲームが未知の文化との交流を楽しむゲームなんかではなく、ただの暗号解読ゲームだということに気づく。このひらめきというか、天啓、これはなかなか強烈なゲーム体験である。しかしストアページからはそうしたことは一切伝わってこない。詐欺といってもいい。こういうものを求めてこのゲームを買ったわけじゃないんだよ。ドキドキ文芸部は無料でしかも隠された内容のクオリティが高かったので許されたし、むしろ歓迎された。しかしこのゲームの隠された本当の内容はしっかりと丁寧に作られているけれど、そこまですごいとかいうほどのものでもない。暗号解読が好きな人にはそれなりに楽しめるだけのクオリティはあると思う、でも未知の文化との交流と思っていたらいきなり暗号解読をやらされるってのは詐欺でしかない。

シュリーマンや アラン・チューリング ごっこがしたい人にはおすすめできる。でもコミュニケーションと言葉が好きな人には絶対おすすめできない。あ、あと機械学習するAIの気分を味わいたいって人にもおすすめだよ!

P.S.
日本語でもプレイ可だが、英語でやらないと難易度が2段階ほど跳ね上がるのでそこは注意。自力でクリアしたい、ストーリーを理解したい人には英語プレイがおすすめ。スポイラーをなぞるのが好きな人ならそんなこと気にせずにお好きにどうぞ。
Posted 18 February, 2022. Last edited 18 February, 2022.
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48.5 hrs on record (22.1 hrs at review time)
まず今プレイしても『Inscryption』というゲームを最大に楽しむことはできない。その意味で「おすすめしない」。というのもこのsteam版InscryptionはARゲーム『Inscryption』の導線にしか過ぎず、コアなプレイヤーたちに強烈な体験を与えたのはそちらのARゲーム『Inscryption』の方であるからだ。そしてその門はもう(おそらく)閉ざされている。

しかしsteam版Inscryptionはこれはこれでよくできたゲームで、デッキ構築ゲームとしてカジュアルで面白いものに仕上がっている。周回や別要素によって強くなる仕組みもあるので、おそらくは誰でもクリアできる。かといって簡単というわけでもなく、慣れているプレイヤーでも真面目に考えてプレイしないと勝てない。monster slayersや後継ゲームのslay the spireに触れている層でも1度クリアするまでは楽しめるだろう(ARゲームの導入要素に拒否反応がなければ)。AR要素を抜きにしてsteam版Inscryption単体としては、特にデッキ構築ゲームをやったことがない人であれば「おすすめ」できる。やりこんでいる人には物足りなさを感じるかもしれない。

こうしたコンピューターゲームの枠外での楽しみがメインになるという作品はあまりないのでピンと来ないかもしれないが、解答編が出る前の『ひぐらしの鳴く頃に』の盛り上がりがこれに近い。みなが独自の考察をして、竜騎士BBSなどのネットに書き込んだりROM専として他人の考察を楽しんだり、コミケ毎にしか新作(公式の新情報)が追加されない状況であったのにも関わらず、その間に各種新説がどんどん浮かび上がってきてプレイヤーは『ひぐらし』にずっと関心と情熱を持ち続けていた。あのゲームが本当に面白かったのは、ゲーム外の謎解きコミュニティによるところが大きい。

ARゲーム『Inscryption』は製作者による壮大ないたずらである。今このゲームを始めた人が触れることができるのはそのいたずらの痕跡と、発売当時に買ったプレイヤーたちがどのようにそのいたずらを楽しんだのかという記録だけだ。歴史家であれば面白いのかもしれない。またコンピューターゲームをARゲームの導入チケットとして発売する、ということを聞いて新しいゲームの可能性を感じたゲームの製作者であれば面白いのかもしれない。そうしたオタクとクリエイター以外にはやはりこのARゲームは「おすすめしない」。

またこのゲームはAR要素にかなり振り切っているので、同じ作者によるPony Islandほどのメタ体験はない。Pony Islandはプレイヤーにメタ体験を与えることをメインに作られているが、Inscryptionはそうではない。だからメタ体験を求めてやるのであればPony Islandの方を勧める。Pony Islandが第四の壁の破壊を目的にしているゲームなのに対し、Inscryptionは第四の壁が元々存在しないゲームであるから。

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問い合わせがあったので追記(2021/11/13)。

ARゲームといってもよくあるスマホのカメラ画面にオブジェクトを付けただけのものではないです。Inscryptionは私達の現実を拡張する本来の意味でのAugmented Realityゲームです(どういうことかはやればわかります)。

ARゲームの導入やコンソールとしてとして1つの独立したビデオゲームを使うという発想は非常に面白く、プレイヤーにこれまでにないプレイ体験を与えてくれますが、ARゲームとしての一番おもしろい部分はもうすでに(おそらく)終わっています。

このゲームは『ひぐらし』のように謎とその解答を小出しにする形で時期を開けて分売した方がよかったというのが私の感想です。そうすれば最終解答が得られるまでの持続する熱狂的な謎解きコミュニティが生まれみながその中で楽しみ、また多くの人がこのARゲームの一番面白い部分に参加できたのにな、と思ってます。
Posted 8 November, 2021. Last edited 12 November, 2021.
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2.2 hrs on record (1.0 hrs at review time)
Early Access Review
【一時追記】Remote Play Togetherでマルチができないと書いていたのですが、実際にマルチができているという報告をいただきました。確認した後で内容を訂正させていただきます。それまではRemote Play Togetherの部分については読み飛ばしてください。

***注意***
このゲームについてに「最大4人でプレイ可能です」とありますが、このゲームはプレイヤー1人とAI3人でしか遊べないゲームです(AI4人を観戦するモードもあります)。Remote Play Togetherを使うと、フレンドもシングルプレイできるようになるというだけであって、フレンドとマルチを遊べるようになるわけではありません。コミュニティハブでニュースを見ると発売してから1ヵ月は熱心にアップデートされていて、最終のアップデートでは「現在、オンライン対戦を実装中です。もう少々お待ち下さい」と告知されています。が、その後何の告知もないまま3年以上が経過しています。開発元はその後も別ゲをいくつか発売していますので、このゲームは見捨てられたアーリーアクセスということになります。以上は2020.12.31現在の状況です。

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それではゲームについて。

卓上にバラバラに牌が見える形で並べられた麻雀牌、そこから牌を集めて役を作りアガるゲーム。集め方に特徴があり、『ペンゴ』(セガ/1982)のシステムを採用している。牌を押すと、その牌の向こうに何もなければ何かに突き当たるまで牌はそのまま滑っていき、途中に敵キャラがいたらそのまま圧殺することもできる。押す牌の向こうに牌がある状態では、その押した牌が砕けて消える。そうして格子ブロック状に並べられた卓上の牌から自牌前のダクトに必要牌を放りこんで役を作っていく。

とここまで書いたのは『Mr.JONG』(キワコ/1983)の仕様だ。そしてMr.JONGを4人打ち麻雀に変えたのがこの『4人打ちアクション麻雀 / ACTION MAHJONG』だ。

シングルプレイで敵キャラを避けながら黙々と役を作っていくMr.JONG、それを4人打ちにしてしまうことで4人打ちアクション麻雀は別ゲといってしまっていいくらいゲーム性が深いものに変わってしまっている。他プレイヤー(AIだが)の手が公開されているので、何を狙っているか、何が当たり牌なのかがわかる。だから麻雀で振り込まないようにするように、他プレイヤーの当たり牌を潰す(潰された牌はしばらく時間を置いて卓上のどこかにリスポーンする)こともできるし、それ以前に牌を集めている他プレイヤーキャラそのものに牌を投げつけて圧殺することもできる。

4人でボイチャしながらマルチプレイができれば、「あいつがあれとこれであがりそうだから潰せ」などと他のプレイヤーに声をかけあって妨害しながらプレイする、もうそれはそれは面白いゲームになっただろう。ただこのゲームは最初の注意で書いたようにシングルプレイである。

シングルプレイとしてのこのゲームは、これまでなかったルール(Mr.JONGは除いて)で麻雀の役を作っていくという脳みそにとって知ってるんだけど知らない行動を要求されるので、最初はあわあわすると思う。そこから少しずつルールになじんでいき、アガることすらできなかったのにAIと戦えるようになっていく過程はなかなか楽しい。勝てるようになったらそこでいいやとなってしまったが、SSなどを見るとスコアアタックをしているプレイヤーもいる。

そして操作性であるが、パッド操作はおすすめできない。1マスだけ移動したいのに2マス移動してしまうということが頻発する。牌を押すときに向いている方向で押すのではなく、そちらの方向に入力を行いながら押さなければならない仕様と相まって、パッドでの操作性は最悪に近い。キーボードでやることを勧める。

総評すれば可能性に満ちあふれたゲームということになる。マルチさえ実装されれば化けた。想像してみて欲しい、トップ目のプレイヤーのアガりを潰そうと他のプレイヤーに呼びかけながら自分は自分で手を着々と進めていく、そこでトップ目のプレイヤーから、「このまま自分潰しで進行すると勝ってしまうのは(あなた)だ、そいつも潰せ」と声が掛かり、状況はどんどん混沌の渦に巻き込まれていく。そんなことをフレンドとわいわい言い合いながら過ごす年末を。

そうである、このレビューを書いているのは大晦日。シングルで楽しかったこのゲームを昨夜友達とオンラインで集まってプレイしようと試みて、Remote Play Togetherがフレンドもシングルプレイできるだけってことだったの?ということを知った者のボヤきである。
Posted 30 December, 2020. Last edited 31 December, 2020.
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90.0 hrs on record
このゲームを博物館のゲームとして語るのは間違っている、現役バリバリの超高難易度Rogue-Like。クリアできたので現代のRogue-likeプレイヤーから見たRogueについて記す。

このゲームをプレイし始めたばかりのころは、アイテムの入手運ですべてが決まる浅いゲーム、そう思ってしまっていた。しかし実際のところ、序盤にいいアイテムに恵まれても、強敵にあっさり叩き潰されて終わる。つまりアイテム運以外のところで勝負する必要があるということだ。そこで試行錯誤する中で、RogueはRogue-likeである以前にRPGだということを思い出した。

CRPGで勝てない敵がいたらレベリングして再挑戦する。それと同じでRogueにおいても勝てない敵が出現する階層に到着するまでに、そいつらに勝てるレベルにまでレベリングしている必要がある。このゲームでもっとも重要なのはそのプランニングだ。

RPGのRTAを自分でプランニングするときのことを思い起こしてもらいたい(やったことがない人は想像してもらいたい、他のRTAプレイヤーのプランをなぞるのではなく、自分で一からルートを構築していくときのことを)。RTAではリアル時間とレベリングのトレードオフを常に行い、その両者の効用が最大になるギリギリのところを攻めていく。Rogueにおけるレベリングもそれと同じで、常にとあるものとトレードオフされる。RTAではリアル時間、このRogueでそれにあたるのは食糧だ。

Rogueはその後の多くのCRPGで取り除かれた空腹度の概念があるためか、餓死を恐れるゲームだというイメージが一部に持たれている。実際に自分もやってみるまではそうだった。しかしRogueにおいて飢えに苦しむことは例外的なケースを除いてないと言っていい。「Rogueは飢えがキツイ」と言ってる人がいたら、そいつはエアプだ(このゲームで本当にキツイものが何かは後述する)。それくらい食糧は潤沢に手に入る。そしてその潤沢な食糧を使って適切なレベリング(ファーミング)を行う。エルデシュ数で有名な数学者エルデシュは、コーヒー(カフェイン)を飲ませると数学論文が出てきたという。それと同じように、Rogueでは食糧をすり潰してそれを経験値に変えていく。

とだけ聞くと簡単に思える。ファーミングは基本、安定行動を繰り返し行うことで、確実なリターンを稼ぐ行いのことをいうからだ。しかしRogueのファーミングは一筋縄ではいかない。こちらのSTRやACや最大HP、さらにはレベルまで下げてくる敵までいるからだ。安定している行動なんて何一つない。その中で特定階層から出てくる強敵のために、それまでに特定以上のレベルに上げられるもっともいいプランを考え、そのプランをじゃじゃ馬のように非安定が顔を覗かせる狩場でなんとか乗りこなし、あれこれやりくりしながらレベリングしていく。……うまく伝わっているだろうか?困難どころじゃない難しさだということに。FTLが発売して間もない時期に独力でHARDをクリアするよりも、Rogueをクリアする方が難しく感じた。

そしてここからがRogueのすごいところである。RogueはRogue-likeであるが故に、プランは立てたもののレベリングが間に合わないことは当たり前に出てくる。そこでゲーム性が一気に逆転する。それまではマップすべてを探索してアイテムを拾い、敵を経験値に変え、さらには食糧グラインドまで行っていたのに、そこからはゲームの目的であるAmulet of Yendorが出現する階まで即降りしていくゲームに変わる。ステルス装備があればそれを身に着け、格上の敵と接敵すれば躊躇なくwandなどで処理し、trap door(落とし穴)があれば自分から飛び込んで下の階へ進む。ファーミングを行っていたときはtrap doorなんて一番かかりたくなかった罠だったのにもかかわらずだ。

Dragonに殴り勝てるくらいのレベリングを行って堂々とAmuletを手にしてもいい(うまくレベリングプランを立てそれを実行できればDragonに殴り勝てるようにはなる、が、毎回確実に勝てるまでにはならないし、Medusaという非安定もいるのでそれはそれで確率上有利と判断された選択にすぎない。この世界は常に非安定がまとわりつく)、それまで手に入れたアイテムが帰還までもつことを祈りつつ、とあるタイミングで即降りプランに移行してもいい。このstrategicな判断が一番重要な選択としてプレイヤーに必ず要求されるのがRogueの他の多くのRogue-likeゲームとは一線を画すところであり、Rogueが博物館のゲームではなく現役バリバリのRogue-likeであることの雄弁な証拠である。

Rogueがここまで骨太な決断をプレイヤーに要求するつくりになっているのは、逆に言うとプレイヤーが他で選択することがほとんど残されていないからでもある。たとえばこのゲームをプレイする前にやっていたWazHack(Rogueを複雑にした作品、NetHackの少しばかり大胆なGUI版)であれば、中盤以降、難敵との戦闘に選択肢が無数に存在するようになる。プレイヤーはその選択肢の中で、生き残れる確率を短期的にも長期的にも最大化できる方向の選択肢を選ぶ。この敵にはこのアイテムを使えば確実に処理できるのだけど、将来この敵の上位版が出てきたときのために温存して短期的に少し死亡のリスクは増えるが次善の策を使うといった具合に。WazHackのようなその種の短期長期で少し相反するところがある選択肢からこれだというものを選ぶというゲームは、そこが面白いところでもあり、プレイヤーの個性が出る部分でもある。Rogueにはそんな選択肢はない。あるのは死が濃厚に予想されるからアイテムを使う、そうでなければ殴り勝つ、これだけだ。それはちょっとのリスクのためにアイテムを消費するということが許さるほどアイテムの供給が多くないこともあるし、ゲームシステムが単純に出来ていることもある。プレイングでうまくやるという余地は極めて小さく、ただ強さ(レベル)が足りているかいないかだけが無骨に問われ続ける。

ここでちょっと考えてもらいたい。ゲーム中で長期的な展望のために短期的なリスクを取って次善策を取るということを行った場合、運悪くその短期的なリスクを引き当ててしまいゲームオーバーになったとき、あなたは悔しがるだろうか? たぶんそうはならないはずだ。ゲームキャラクターは死んでも、あなたは死なない。しゃーないとでも思いながらリスタートしてるだろう。しかしそんな選択肢などなく、ただ目前の敵とのダメージレースで勝ち負けが決まるという状況ならどうだろうか? 移動兼攻撃のキーを押す指に近年おぼえがないほど力が入ったし、勝ったときのよっしゃーという感じは他ゲにくらべて明らかに強いものがあった。選択肢がないことが「そういうリスクはあることはわかってるけど、他との兼ね合いでそうするのがよかった」という言い訳を廃し、ただプレイヤーを目の前の戦いに没頭させていく。これがどんどんプレイヤーをゲームに熱中させていく、選択肢がないことにこういう効果があるとは思わなかった。

Rogueにもちょっとした操作の立ち回りのtacticsはある。ただそれは今の時代、他の数々のゲームに触れているプレイヤーにとってはどこか他のゲームでやったことのあるもので、Rogueでも数十時間もプレイしていれば自然に身に付くものだろうし(KitingしながらHP回復、集団をトレインしてAOE、指輪のこまめな着脱)、選択というほどのものでもない。Rogueに求められるのはプレイ体験を通して得た知識に基づいた各プレイヤーのレベリングプランの構築と実行であり、そしてそのプランの成否を見定めた即降りという真逆のプランに道中で変更するstrategicな決断である。

幸いなことに、Rogueは近年のRogue-likeの流行と、そしてRogue自体もさまざまなバージョンが存在することにより、このEpyx版Rogueを具体的にどうやればクリアできるという情報をネットの海から検索で見つけることはほぼ不可能となっている。だからあなたは自分の力だけで、レベリングプランを立て、それを実行することができる。そして即降りへのプラン変更をするのもあなた自身だ。頼れるのは自分自身の力だけ、これは近年の攻略情報に囲まれたRogue-like界では稀なことだ。Rogueの勝利は正真正銘、あなたの勝利となる。そんな本当の勝利を得ることができるRogue-like、あなたもプレイしてみませんか?

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以下、現代のプレイヤーに向けたFAQ

Q.操作方法がわからないんだけど?
A.F1を押そう。操作コマンド一覧が出てくる。表示されてるように移動はいくつかのやり方があるが、自分はhjklで十字移動、yubnで斜め移動でやっている。

Q.記号が何を意味するかわからない。
A.F2を押そう。説明が出てくる。

Q.どこも行き止まりで、階段が見つからない。詰んだ。
A.sキーを押して探索しよう。隠し扉が見つかる。ただし1回で見つかるとは限らない。30回近くsキーを押してやっと見つかることもある。

Q.アイテムがなんだかわからない。
A.IdentifyのScrollがあるならそれで鑑定できる。なかったり使いたくないなら、実際にそのアイテムを使ってみればわかることもある。

Q.アイテムの効果がわからない。
A.バージョン違いだけど、以下のサイトに説明がある。バージョンが違うためそのまま使えるわけではないが、大体のところはいけるはず。なお、モンスターリストなどもあるので各自お好きなように。これらのサイトを見たからといって、Rogueのクリアが汚されることは絶対にない。あるという奴がいたら、そいつにクリアさせてみろ。

Epyx版ではないがRogueの各種データ。英語サイト
https://nethackwiki.com/wiki/Rogue_(game)
アイテムや敵のデータがEpyx版とは少し違う。

日本語版Rogue Clone IIの各種データ。日本語サイト
http://aaa.game.coocan.jp/rogue/
攻略情報もあるが、敵のデータや出現パターンがEpyx版とは違うので、いい意味で参考にならない。序盤でいえばIce Monsterは経験値がおいしい敵だ。
経験値テーブルや各種パラメータの計算式などは役に立った。
なお、Amulet of Yendor入手後は腹が減らないようになると書かれているが、Epyx版は普通に減る。ちゃんと食糧は持っておこう。Epyx版にも当てはまると信じて食糧を捨てての帰還中、食糧難で死にかけた人からのお願いだ。

Q.windowモードでやりたい。
A.TTTさんがレビューの中でやり方を書かれているので、そちらを参照してください。

Q.食糧足りなくない?やっぱり腹が減るんだけど?
A.指輪付けてませんか?

Q.後述すると言ってた本当にキツいものって何なのよ?
A.Medusaに決まってる。通路でConfusionさせられたら、そのままだとほぼ死亡確定。適切なリソースを使って切り抜けよう。tipsとしては、通路側から隠し扉を探すときは、ring of serchingを外そう。内部処理がどうなってるのかわからないが、つけたままだと隠し扉にMedusaがいたとき、なぜか先制される(つまりgazingが来てconfusionさせられる)。指輪を付けずにserchしてたら平気。ただこれは個人の経験則なので、違うかもしれない。けど、オレはこれで生き残っている。

何か他に質問がありましたら、お気軽に。steamを見ている限りは反応します。
Posted 26 December, 2020.
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56.3 hrs on record (55.8 hrs at review time)
冒険を続けてきた君は、邪悪な魔術師の事務所に辿り着く。壁の標識には「営業時間はAM9時からPM3時 魔術師は*在室中*」と書かれている。足元を見るとピアノ線が張られていて、天井にはわかりやすく落石の仕掛けがある。君は前に進みドアを開けるか?

ドアを開けるならダイスを振れ。6が出たら、――本当に6が出たのか?ここまで来ておいて?――14へ。

はるかな昔、ゲームブックというものがあった。読者は上に書いたような分岐イベントに遭遇し、どう行動するか選択肢から選び、ダイスや本のページの早繰りで成功判定をして、その結果に従う。Hand of Fateはそうしたゲームブックの分岐イベントをカード化したゲームだ。プレイヤーは伏せられたイベントカードを順に選び、発生したイベントに対して成功判定を行う、生き残っていたらまた次のイベントカードを選ぶ。

成功判定の方法は2種類ある。

1つはシャッフルされた4枚の伏せたカードから1枚選ぶもの。成功なら報酬、失敗ならペナルティがある。

このカードシャッフルの成功判定は非戦闘時のイベントに発生する。では戦闘時のイベント処理はどのように行われるのか? それがもう1つの成功判定、Batman Arkhamシリーズのようなアクションによる戦闘である。そしてこの戦闘アクションこそが、このゲームを最高に面白いものにしている。

バットマンに触ったことのあるプレイヤーなら考えてみて欲しい。ライフや装備やスキル、敵の組み合わせやマップなどが毎回違った状況で敵を一掃し続けていく。そして途中で死ぬとすべて失われる。ゾクゾクしてこないかい?

ステルススキルなどを使ってどのように敵を倒して行くのかがメインになるバットマンと違って、Hand of Fateは乱戦の中で素早く判断し、的確な操作を行うことで戦闘に生き残るということに焦点が当てられている。Plan Do Check Actionで攻略していくのがバットマンで、与えられた状況に即興で答えを返すのがHand of Fateだ。その即興の激しいダンスに耐えられるように、アクションゲームとしてしっかりと作り込まれている。バットマンでは自分も敵もかなりの範囲ホーミング追跡するため、攻撃を当てやすかったし、敵の攻撃にもちゃんと対処しなければならなかった。Hand of Fateでは間合いを少しずらすだけで敵の攻撃をスカせる、ミリ単位の見切りが可能だ。つまり、乱戦時に敵が自分を攻撃してくる中、それを見切って何事も起こってないかのように涼しい顔で他の敵に打撃を叩き込み続けることができる。仕様や装備によって無双するのではなく、プレイヤーの技量によって無双するゲームだ。バットマンタイプの戦闘を、乱戦をより熱いものにすること、その目的のために再構築し、生まれたのがHand of Fateだ。

(世間での戦闘の評価が低いのは、難易度ノーマルでプレイしているからだろう。バットマンを触ってないプレイヤーに上記の要求はあまりにも過酷だ。見切ることで無双できるゲームをボタン連打で無双できるゲームにしていることによる不評だろう。それだとこのゲームの良さがまるで活きない。ここまで読んでこのゲームに興味を持った人は、難易度が選べるようになる2ステージ目以降はずっとハードモードでやって欲しい)

さて、このゲームが売りの一つであるデッキ構築についてはどうなのか?

デッキ構築ゲームと聞いて多くの人が想像するであろうMTGやDominionのような要素はこのゲームにはまるでない。プレイヤーは最大40枚のイベントカードのデッキを作るが、せいぜいやることと言ったら、ステージの設定が非戦闘系イベントが不利になるというものであれば非戦闘系イベントのカードを減らすなどといったごくごく当たり前のことだけだ。プレイヤーがデッキを作る段階ですら、すべてのデッキカードを戦闘系や非戦闘系に染めたりはできない。その上ステージごとに固有のカードが強制的に足される。ステージ固有カードにアンチカードがあればデッキに仕込んでおく、ということができたら面白味もあるが、アンチカードもない。またカードごとのシナジー効果もほとんどない。デッキ圧縮などのコントロールもできない。

デッキ構築が好きな人は、知的な行いを愛するものだ。残念ながらHand of Fateのデッキ構築に要求される知性は、RPGの水属性の敵には雷魔法と同じで、当たり前のことを当たり前にするレベルのものでしかない。この部分に期待して買った人はがっかりするだろう。

ではもう一つの売りのローグライク要素は?

ヘルス、フード、ゴールドなどの消費リソースをやりくりしつつ、イベントに挑戦するか回避するかを考え、判断していく。これだけなら平凡なローグライクだ。だが、イベントカードにはクリアするとさらに上位のカードに進化するものがあることが、プレイヤーの判断を悩ましいものにしている。たとえばヘルスが70しかない状態で、ヘルス60を消費するようなイベントは普通は受けない。だがそのヘルス60消費イベントが、クリアすると次の冒険からその上位のイベントカードが使えるということになればどうだろう?

今回の冒険の成功を優先するか、長期的なデッキカードの充実を優先するか、プレイヤーは常に判断を迫られる。ハードモードでは後半ステージは失敗することが当たり前になってくるので、今回の冒険がうまくいっているときに余分な負荷を負いたくない。しかし冒険がうまくいっているときでないと60ヘルスなんてそうそう払えやしない。今回の冒険を優先してクリアしたとして、次のより難しくなったステージでまた同じ選択を迫られることになる。だからといって上位イベントアンロックを優先してもアンロックできず貴重なリソースを無駄にすることもなりかねないし、そうしたことばかり続けていたらこのステージがいつまで経ってもクリアできないではないか!

この判断の部分は、まさにローグライクの一番面白い部分である。長期的な目標か、短期的な目標か、Hand of Fateはあなたに選択を迫り続ける。

人間は簡単にできるという理由で欲望を持つと思われている。事実ではある。簡単なのでやりませんか?とかね。最近のゲームはその路線で作られているものが多い。だが人が欲望を持つもう一つの理由がある。最近のゲームの作り手たちは人が欲望するもう一つの理由を忘れてしまっている。そう、人は困難だからこそその困難なものを為し遂げたいという欲望を持つ生き物でもあるのだ。はるかな昔、そうした人々はゲーマーと呼ばれた。Hand of Fateはそうした*いにしえ*のゲーマーのためのゲームである。


14
R.I.P.
Posted 1 July, 2015.
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0.4 hrs on record
気持ち悪いゲーム。ネタに走った割り切ったゲームでもなく、本気で作ってこうだったというところ、そしてそんな作った人がいることが気持ち悪い。

恋に盲目になった人が、自分の中で勝手に相手に依存してしまい、相手がどんな反応をするかが第一になってしまう、それは恋愛自体がそうした性質を持つものだ。でもそのために待ちぼうけすることがあったとしても、それはその人にとっての大事な相手だから、よりはっきりいうと、その人に相手が特別大事な存在だとわかる知性があるということだから、当人にとっては構わない話だ。傍目には意味がなかったり、みっともなく見えたのだとしても。

傍目には愚かに見えるけれど、本人にとってはかけがえのない意味のあるもの、恋愛に限らず人が何かに熱中し恋い焦がれるとはそういうことだ。そしてこの世界の黄金はそこにしか存在しない。それをこのゲームは愚かに見えることだけに焦点を当てて、プレイヤーに愚かな行為をさせている。そのときにプレイヤーキャラクターが話す愚痴も、恋の盲目状態になってて純粋に相手を思い続けているために発生する愚痴などではなくて、傍目にも彼女はいい女だ、自分は27歳だからもっと女性をうまく扱って見せなければならないなどと、常に傍目からみた愚かしさの愚痴ばかりだ。

恋の愚かしさを扱ったゲームなどではなく、常に傍目を気にしている人間のみっともなさを扱ったゲームになっている。それならデートの待ちぼうけなどをモチーフにするよりいくらでもいいやり方があるだろうし、みっともなさを描くのならまた別のいいやり方があるだろう。

結局作り手自身がほんとうにかけがえのないものを持っていなくて、それなのに傍目にうけいれられようとばかりしていて、その目的のために作られたゲームだ。だから猛烈に気持ち悪い。

できない理由ややらない理由ばかり探して自分を肯定している人は鬱陶しい。そんな自己肯定のためのできない理由探しをプレイの間ずっと聞かされ続ける。そんなのこのゲームをしなくても、ちょっとネットを見れば溢れかえっているではないか。この商品はこれこれと言われている、あるいはスペックがこれこれだから買わない、あのイベントはどうせこれこれだから行かない、行動するとそれによって面倒ごとが増えるからやらない、などと言った形で。

傍目を気にして言い訳ばかりする人の愚かしさに焦点を当てるのであれば、このゲームのタイトルはPro Steamerにするべきだった。画面にはSteamのセール画面を表示し、ゲーム内のキャラクターがセール画面とネットのforum画面などを切り替えながら、「これはGOTY版待ちだな」とか「これは最安でないからスルー」とか「75%offだけど、価格改定がそろそろ来るだろうからそれを待つ」とか「これはおま値だから不買」とかずっと言い続けるのを眺めるだけのゲーム。そうだよ、こっちの方がキャラクターがやってることの愚かしさがよりはっきりして、ずっと面白いゲームになった。

クリアまでの時間20分。日本語化あり。
Posted 24 December, 2014.
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4.8 hrs on record (4.8 hrs at review time)
何かのストーリーを物語る短時間のゲームが近年増えてきている。雰囲気ゲームと言われることもあるこれらの作品は、アクションゲームの形を取りつつ何らかのストーリーをプレイヤーに伝えることを大きな目的としている。それらのゲームはプレイヤーにゲーム世界に没頭しストーリーを味わってもらうために、それぞれ独自の趣向を凝らしている。たとえばPapo&Yoでは独特なアートワークと練られたパズル、Brothersでは作り込まれた世界と連続するミニゲームといった形で。これらの趣向こそが、この手の短時間ストーリーアクションゲームの大きな魅力にもなっている。今から紹介するNever Aloneもそうしたゲームの一つだ。それではNever Aloneに込められた独自の趣向とはどういったものなのだろうか?

それはこのゲームが「体験するドキュメンタリー番組」であることだ。ロバート・クリーブランド著の『クヌーサーユカ』というイヌピアット(アラスカに住むイヌイットのことをこう呼ぶ)の伝承を題材に作られたこのゲームは、イヌピアットが体験する吹雪がどんなものであるのか、イヌピアットが子供のころに親から伝えられたちょっと怖い話、イヌピアットにとって自然はどのような存在であるのか、といったことをアクションゲームをプレイすることを通じてプレイヤーに伝えようとしている。

ドキュメンタリー番組で「イヌピアットの人たちはこんな吹雪に遭遇します」や「イヌピアットの人たちは子供の頃に親からこんな話をされます」や「イヌピアットの人たちは自然をこのようにとらえています」などとナレーション付きで映像が流されても、視聴者はモニターの向こうの話としか感じることができない。しかしこれらのことをゲームとして伝えることはできないだろうか? ゲームであればこれらのことをモニターの向こうの風景ではなく、操作するキャラクターを通じて自分が体験することとして伝わらないだろうか? Never Aloneはそうした体験するドキュメンタリーをゲームというメディアを用いて成立させることに挑戦した作品だ。

そして「体験するドキュメンタリー番組」としてこのゲームは見事に成功している。アクションシーンでフクロウを捕まえるとその付近のことを題材にした1つのドキュメンタリー映像がアンロックされ、その映像を見ることで今自分がいるシーンへの感情移入が深まっていく。最初のうちこそ「どうしてゲーム中にドキュメンタリー映像なんて見なくちゃいけないんだ?」と半ば嫌々見ていたものの、気が付くとフクロウを見つけて次のドキュメンタリー映像をアンロックするのが楽しみになってきている自分がいた。

「これは新しい! ドキュメンタリー番組をゲームで表現すると、ここまで惹き込まれてしまうものか?」と驚かされた。ゲームで何か新しさを体験したい人、ヒストリーチャンネルなどのドキュメンタリー番組が好きな人におすすめのゲーム。あとJ・キャンベルの『神話の力』などの書籍が好きな人にも。こんなゲームをしてしまうと一番好きなドキュメンタリー番組、Terry Schappertの『WARRIORS』(邦題は『世界の最強武術を体得せよ』)もどこかの会社にFPSアクションとしてゲーム化して欲しくなる。

ではアクションゲームとしての出来はどうだろう? このゲームがイヌピアットのドキュメンタリーを目指していることもあってか、良くできているという水準にとどまる。無難に仕上げられている。プレイ感覚はLIMBOに近い。それにChild of Lightの移動シーン(強風&精霊操作)を組み合わせた感じ。パズル要素もパズルと言えるほどの難しいものではなく、アクションシーンはプレイヤーに体験を伝えるために作られているといっていい。

ただし終盤は少し難易度があがる。とはいえ何度か死なないとどう進行させていいかわからないという形の難しさであり、極めて限られた時間の中で正確な操作をしないといけない難しさではない。全編を通して崩れる床などの時間制限ギミックは多いが、どれも時間猶予は長めに取られている。

またこのゲームはシングルでは女の子とキツネの両方を切り替えながら動かして行くが、ローカルCoopの形で2人でそれぞれのキャラを動かすことも可能になっている。実際にCoopでプレイしたわけではないが、終盤の難易度は2Dアクションに慣れていない人には難しすぎるように感じた。1人がゲームに慣れている人で、もう1人が慣れていない場合、終盤までは楽しく遊べても終盤で行き詰まってしまうおそれがある。アクションはおまけでドキュメンタリーがメインなのだから、親子やカップルでプレイしてサクサククリアできるくらいの難易度であったほうが良かった。片方が何度もミスして詰まってしまうと、楽しくないものね。(ゲームをあまりしない人とのCoopを実際にやった方がいらっしゃいましたら、ぜひ感想を聞かせてください)

最後にドキュメンタリー番組としての評価を。映像に登場する話をするイヌピアットの人たちが装飾品こそイヌイット的なものを身に付けつつもJ.C.Pennyで買ったような服を着ていること、それとイヌピアットの持つ伝統や文化や精神をイヌピアットの人自らが現代社会の価値観を用いて説明していること、これらが奇妙な対比をなしていたのが強烈だった。制作者はそんなこと意識しなかっただろうけれど、今のイヌピアットの現実がダイレクトに伝わってきた。優れたドキュメンタリーって、制作者の意図を超えたところで、本当に大切なことを伝えてしまう力を持つよね。Never Aloneもそんな優れたドキュメンタリーの一つ。

上で書いた奇妙さは、原作の『クヌーサーユカ』は男性主人公が一人で世界を救う話になっているにもかかわらず(そしてイヌピアットたちは「一人で状況を打開する」という誰もが持つはずの力を尊んでいるにもかかわらず)、Never Aloneでは女の子主人公がキツネと助け合う話に(タイトルまで)変わってしまっている奇妙さにも繋がっているのだけどね。


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クリアまでの時間:
└4hrs
コンプまでの時間:
└4.7hrs
クリアにスポイラー(攻略情報)は必要か?:
└No(思い込みでドハマリしない限り不要)
コンプにスポイラーは必要か?:
└No(思い込みでドハマリしない限り不要)
難易度:
└普通(LIMBOをクリアできる人なら余裕)
Posted 23 November, 2014. Last edited 24 November, 2014.
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2.4 hrs on record
子ども向けの人形劇シアターの夜間警備員のバイトに採用されたオレ。深夜0時から朝6時までの5日間の気楽なバイトはずだった。……が、人形が動くなんて聞いてなかった!

主人公は警備室から劇場内を11個のモニターを切り替えながら監視できる。カメラを切り替えて、元に戻してみるといたはずの人形がなくなってる。そう、人形たちは監視室から一番遠い人形置き場から、警備室に向かって少しずつ(時には大胆に)忍び寄ってくる。

警備室にも防衛設備はある。左右のドアがそうだ。これを閉めていれば大丈夫。しかしそれだとゲームにならない。ここがこのゲームの一番のポイントで、監視モニターやドアを使っていると、電力の消費が大きくなるのだ。

電力は画面左下に「Power left」の形で表示される。0時時点では100%。その下の「Usage」は今の電力消費量。通常状態で1、他に監視カメラやドアなどを使っていると、使用設備数に合わせて使用量が増えていく。そして電力はギリギリしか保たない。常に電力2では朝を迎えるまでにバッテリーが尽き、人形に突入されてゲームオーバーになる。

そう、このゲームはただのびっくりホラーゲーではない。だるまさんが転んだ(地方によっては坊さんが屁をこいた)にリソース管理の概念を加えた、防衛ゲームだ。

もちろんホラーゲームだし怖い。2回のプレイでどんなゲームかわかり面白さを理解してからでも、すぐにプレイに向かわずこうしてレビューを書いて逃避してしまうくらいには怖い。でもそれはホラーだから怖いというより、リソース管理をしながらピリピリとした状態で敵の侵入に耐えなければならない緊張感の怖さの方が強い。それがホラーだけになお怖い。

ゲームにはストーリーなどの外観でどうやってプレイヤーを感情移入させるかのテーマの部分と、システムなどの内部構造でどうやってプレイヤーを熱中させるかのメカニクスの部分がある。Five Nights at Freddy'sは深夜の人形劇場でのモニター監視というテーマの部分と、リソース管理付きだるまさんが転んだというメカニクスの部分、それが互いに互いの面白さを引き出し、ゲームをすごく面白いものに仕上げている。

オススメ。特にゲームの作り手サイドの人にはぜひやってもらいたい(作り手じゃない人にももちろんオススメ)。プレイすればいかにコンセプトが素晴らしく、またいかに見事にそのコンセプトを実装しているのかがわかるはず。たぶん、びっくりするような低予算で作られているはずだ。でも全然安っぽくない。作った人の才能をひしひしと感じる。そしてこうしたゲームが存在することは、作り手サイドの人たちの力になる。

他にもTDを含めた拠点防衛ゲームが好きな人、リソースを管理しながら攻略プランを作っていくのが好きな人、そうした人たちにもぜひ触ってみて欲しいゲーム。怖い敵がじわじわせまってくるのに、カツカツのリソースでなんとかするゲーム、って聞いて面白そうと思った人はぜひやってみて。

長々と書いたが一言で言うと、だるまさんが転んだのオニをリソース管理をしながらやったら面白くない? この言葉にピピッときたら、まず開発。

なお、英語は全然わからなくてもOK。知っておくべきルールはこのレビューで全部書いている。
Posted 12 September, 2014. Last edited 13 September, 2014.
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18.4 hrs on record
本作Guacamelee! Super Turbo Championship Edition(以下STCE)は前作Gold Edition(以下GE)をベースにした拡張版。なのでゲームとしての評価はGEのものを参照されたし。
http://gtm.steamproxy.vip/id/notehimself/recommended/214770/

ここではSTCEの追加点を中心に書いていく。

まずGEをNormalクリアして終わっただけの人には、このゲームは勧められない。というのもSTCEはGEに2つの追加マップと新たなボス、それに新Special Moveが加わっただけのものだからだ。ストーリーや進行は基本GEと変わらない。プレイしても新しいゲーム体験は得られないだろう。

しかしあなたがGEのHardをクリアするくらいこのゲームに慣れ親しんでいる人ならば、STCEはそんなあなたのために作られていると言っていい。

新しく加わった新要素のINTENSOは、敵と戦っていると貯まっていくゲージが追加される。ゲージが一定量貯まっているときに解放すると、自キャラの攻撃力がすさまじく上がる。ショップでAbilityを買っていると、敵のどんなシールドでもワンパンチで破壊できたり、解放中ずっと体力が回復し続けたりする。ゲージは猛スピードで減っていくが、敵を倒せばゲージは増えるので、ハイペースで敵を倒し続けていればINTENSO状態がずっと続く。ゲージがなくなるとINTENSO状態終了。ダウンしたりして時間を無駄に過ごせば、恩恵が受けられないまま終わる。特筆すべきはINTENSOでは防御力がまるであがらないところだ。敵の攻撃をかわしながらコンボを叩き込んでいくというこのゲームの基本は変わらない。ただ叩き込むコンボの威力が尋常でなくなっているだけだ。

Normalでもボスやアリーナで苦戦している人には助力になるだろう(タイムアタックであるSpeed Runでも。むしろINTENSOで戦闘時間をいかに短くしていくのかが勝負になる)。でもINTENSOが本当にゲームデザインに組み込まれていると感じるのはHard Modeでだ。

HardではINTENSOを使わないとクリアがほぼ不可能な場面が現れる。そこで適切にINTENSOを使い、敵を瞬殺しなければならない。画面一杯に敵があふれていることもある。しかも各色シールド付きで。

そうした敵を相手に無駄な動きなく強烈な攻撃を叩き込んでいく爽快感はたまらない(無駄な動きがあるとこちらが死んでしまう)。そうしたテクニカルな爽快感、技量は要求されるけれど一定の水準を超えたときにやってくる無双状態、良質なアクションゲームにつきもののそうした爽快感はGEでもあったものだ。そしてSTCEはさらにその爽快感を突き進めている。この爽快感を知っている人には、STCEはものすごく楽しめるゲームになる。

他にも地形を有効活用して戦わないと勝負にならない戦闘があったり、新マップではあたらしいギミックが登場していたりなど、前作GEの正常進化と呼ぶのにふさわしい内容に仕上がっている。ただ最初に述べたように、基本となるマップや要素は変わらない。感覚でいえば大型DLCくらいの変更点だ。

それでもGEをしゃぶりつくすように遊んでいた人にとってはSTCEは素晴らしい『おかわり』になる。GEにあった細かい不満点(セーブスロットが1つしかない、100%クリアにInfernoなどのコンシューマーでGEになってから追加されたであろうマップが含まれない、店で買うまで各種の投げが使えない)も解決されているし、Metrovania好きにとってはやはり新マップの探索はたまらない。マップの構造も練り込まれたものになっている。とはいえ、複雑になったという意味ではない。これまでの経験で見当を付けて探していくとちょうどそこにあるという感じに仕上がっている。GEを100%クリアできた人であれば今回も自力100%クリアは難しくないだろう。

というわけで結構人を選ぶゲーム。GEをしゃぶるほど好きだった人限定。それに加えてこれから新しくGuacameleeを始める人には、もちろんこちらのSTCEをオススメする。

ボリュームは前作normalを2時間でクリアできる人が初見で、normalクリアに4時間半、100%クリアに11時間、Hardクリアに5時間半、全実績取得に16時間半。これくらいのボリューム。
Posted 24 August, 2014. Last edited 12 September, 2014.
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2.2 hrs on record
いい映画。こうした一般人にはわかりにくいものを題材にするときは、「人気がある」だとか「売れている」だとか「評価されている」ということを前面に出したどうしようもなくくだらないドキュメンタリーになることが多い。だがさすがvalveが制作しただけあって、ゲーマーのゲーマーによるゲーマーのための素晴らしい映画に仕上がっている。正確にはゲーマーのための映画ではない。何か自分が価値があると思うものがあって、それに向けて全力で努力している人、そうした人のための映画だ。

だからDotaやLoLのようなMOBAをやっている必要はない。私もそれらのゲームはろくにプレイしていないが、十分に楽しめたし、また力付けられた。

中国や韓国のようなゲーマーが一般の人からも尊敬される国は別として、それ以外の多くの国々ではゲーマーは自分が価値があると思って全力を注ぎ込んでいても、勉強をがんばっている人や、プロサッカー選手を目指して練習に励んでいる人ほどは評価されない。いや、評価どころか、ただ遊び惚けているだけと思われることがほとんどだろう。

その中である人は、ゲームに熱中するのをやめて世間や社会が大事とするものに注力するようになる。また結婚して子供ができたからといって、それまで熱中していたはずのゲームからすっぱり足を洗ってしまう。もしくは配偶者や子供を免罪符に、以前のように熱中できない自分を正当化する。またこんな人もいるだろう。ゲームより(世間や社会ではなく)自分が価値があると思えるものに出会って、そちらに熱中する人も。

だが、この映画に出てくる人たちは最後のケースを除いてそのいずれでもない。世間や社会や周りがどう言おうと、自分が価値があると思うものを信じ、そして価値があると思うからこそ励み、強くなってきた人たちだ。

そう、竜を殺そうとする人たちだ。

竜がいる現実を仕方ないと受け止めて、その現実の中での栄達を目指すのではなく、また竜なんていないものと現実から目を背けて生きるのではなく、人や周りが何と言おうと自分が価値があると思うものを信じ、そしてその価値があるものを手に入れるために全力で努力する人たちだ。

そしてそんな彼らの前に一つの世界大会が出現する。1位賞金$100万の世界大会が。

お金は公平だ。お金こそは世間や社会が価値があると思うもののチャンピオンだ。竜を殺そうとする人たちは、いつも、ずっと、孤独だった。自分が価値があると思うものの、価値を世間や社会と共有できることはまずなかった。それが既に共有されている場合を除いて。

そこに出現した1位賞金$100万の世界大会。これは竜を殺すことに価値があると世間や社会に認めさせるチャンスだ。竜を殺すことの価値がわからない人でも、$100万の価値ならわかる。あとは自分が竜を殺せる人間であることを証明するだけだ。

この映画はこうした自分が自分であることを、世間や社会に証明しようとする者たちの映画だ。自分が価値があると思うものの価値は自分だけが知っていれば十分だ、そんな意見もあるだろう。だが、彼らはいつも、自分の思い、自分の価値を認められることを渇望している。その飢えと渇きを満たしてくれるイベントが発生した。

あなたが「ただの死んでいない人間」ではなくて、「自分が価値があると思うもののために生きている人間」であれば、この映画はぜひ見るべきだ。もちろんそれは、飢えと渇きを持っているものが他にいることを確認して満足するためではなく、そこに「自分が価値があると思うもののために生きている人間」の姿を見ることができるから。

そして見終わった後であなたは気付くのだ。"Free to Play"の意味を。
Posted 20 March, 2014. Last edited 20 March, 2014.
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