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107.7 hrs on record (55.0 hrs at review time)
野良でやるときのコツですが……。

・6人以上集まると、最初にお題の絵を描いた人が「気に入った絵を選ぶ」ことができるようになるので、他に部屋で待っている人と同意が取れるならば、6人集まるまで待つといいと思います。

・通常設定では単色(一つの色でお絵かきする)なので、下の「投票」というところをクリックすると、太い線を描くことができたり、あるいは色を選択することができるようになります。
Posted 24 March, 2021. Last edited 9 April, 2021.
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3.0 hrs on record
「FPSドローイングソフト」というこのゲーム自体が一つの「アート」なのかもしれない

【忙しい人のための概要】

このゲームは、「DNA鑑定の結果、アーティストに適正がある」と言われた主人公が、宇宙空間においてFPSの操作性を持ってして絵を描くというゲーム。ツールも現実世界に即したものであり、絵の具を混ぜ合わせたり、絵の具を飛ばしたり、あるいはスプレーで吹きかけるといった要素がある。また、絵を描ける場所は、面であるならばほぼ何処にでも描けるというところが魅力で、発想力次第では色んな絵を描いて遊ぶことが出来る。また、主人公はアーティストであるので、色んなクライアントから発注を受けることも出来たりするので、とくに描くことがなければ、それらの発注をこなすというのも楽しみの一つ。発売前のデモ版のため、無料で遊ぶことができる。

【忙しくない人のための長ったらしい話】

ゲームの世界には不思議なことがちょくちょく起きて、当時は単なる「技術的制約」だったものが、その技術的制限を、現代の技術を利用して再現するという、本末転倒なことが良く起きたりする。ドット絵の制約なんかもその一つであるだろうし、あるいは90年代のFPSを再現するためにローポリにしたりするというのもあるだろう。もちろん、それは「ノスタルジー」を喚起するという役割もあるだろうし、あるいはもっと他の理由もあるかもしれない。

恐らくこのゲームは、そういう技術につきまとう本末転倒さ――技術的に制限されたものを、現代の技術によって再現する――というものの一つだろう。なぜなら、このゲームではデジタル空間に再現された「アトリエ」で、FPSのような一人称視点で筆をもって絵を描くというゲームなのだ。

「アトリエ」はリアルに即したものである。だから、「取り消し(アンドゥ機能)」はないし、絵の具は使えば使うほど無くなっていくので取りに行かなければならないし、届かないところには土台をあげて描かないといけない。いわゆる現実における「不便さ」がそのまま再現されているので、なんでこんな不便な世界で絵を描かなければいけないのか、と思うのである。

だがしかし実際にプレイしてみると、思ったより楽しい。気がつくと、このゲームが持つ「不便さ」を愛し始めるのである。例えば、間違えて引いた線を細かく塗ることであったり、色を切り替えるたびに筆を洗ったりするといった一つ一つの作業が、とにかく楽しいというよりも、愛おしいもののように感じる。

ある意味においては「デジタルで絵を描く」ということが極度に発展しすぎて、レイヤーだとかマスクだとか、あるいはフィルターだとか、そういった「ツールを使いこなすための膨大なノウハウ」というものがあって、実はそれを学ぶということのほうが遥かに面倒くさくて、しかも不自然なことだとも言える。少なくとも俺の持っているペンタブはほこりを被り、Clip Studioというマンガ用のソフトは起動しなくなっているが、殆どの機能を未だに知らないのである。

そう考えると「FPSの操作」というのは、思ったよりドローイング向けだとも言える。もちろん、本格的な絵を描くのには向いていないけれども、しかし最も大切な「お絵かき楽しい」の精神には寄り添っているとも言える。「近づくと拡大し、遠ざかると縮小する」というのは「ホイールを使って拡大縮小する」というよりも、はるかに直感的ではある。

要は不便ではあるのだが、親しみやすいというか、なんだか自然で、身体にフィットしているというのが、このゲームのいいところだろうと思う。そして、それはなんだかちょっと「アートっぽい」感じのひねりがあって、ちょっと好きだ。

たたしかし、デモ版だから仕方ないけれども、やはり宇宙空間で一人きりで絵を描くのは寂しいし、そもそも俺自身がなにかの作品を粘り強く作るような「アーティスト気質」の人間ではない。どちらかと言えば「自分が絵を完成する」よりも、「他人の絵を高値で買い取る」という、コレクターごっこをやってみたいという気持ちが強い。早く俺のクソみたいな絵10枚売って、他の人の絵を一枚買いたいんだ!そういう意味で、完成が楽しみなゲームである。
Posted 21 March, 2021. Last edited 21 March, 2021.
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6.3 hrs on record
ゲームシステムと世界観が高度にマッチした稀有な「RPG」

こういうゲームがレビューされるときに、多くの人が「斬新なゲームシステムだからすごい」なんて言うのだけど、そういうのを見るたびに白けてしまう。

その理由は簡単で「斬新なゲームシステム」というのは多く発売されており、そういうゲームの殆どは「面白くて斬新」であっても、どんどん埋もれていってしまうものである。そして、俺はそういうゲーム達を見て「ゲームを開発する」とは如何に厳しいかを考えてしまうのだ。人が「斬新だ」なんて言っている間にゲームをしてくれれば、幾つかのゲームは救えるはずだが、そんな愚痴を言っても仕方はないし、ゲームが救われても俺が救われるわけではない……。

そういう嫌われそうな前置きはともかく、恐らく本作の魅力というのは、その斬新なゲームシステムに対して、うまく融合した世界観とストーリーラインというのが言えるだろう。

多くのゲームの場合、どこか「ゲームシステム」と「ストーリー」の関係というのは、「わざとらしい」か「考えさせない」ようにしている。たいていはゲームシステムに対して「とってつけたようなストーリー」が付属しているだけで、両者はそこには関係がないし、ゲームというのはそういうものではある。

だが、このゲームにおいては「タイルを配置する意味」というのも「主人公がループして探索を続ける理由」も「設備を強化する理由」も、一つ一つが存在しているような気になるのだ(フィールドで倒れたときも、ちゃんとキャンプに戻ってくる理由がある)。ゲームシステムが斬新であるにも関わらず、それが世界観やストーリーライン、暗いドットがマッチしていて、高い没入感を生み出している。だからこそ、ついつい先に進めたくなるし、あるいは図鑑やフレーバーを集めたくなるという魅力に満ちている。

もちろん、色々な理由を上げることはできる。しかしポイントは「斬新なアイデアを埋もれさせないほどに、アイデアのポテンシャルを吟味し、それを高い水準で利用している」ということなのだ。

多くのゲームというのは、何処か爪が甘く、斬新なアイデアを埋もれさせる結果になる。だが、このゲームはその「斬新なアイデア」を起点として、それをちゃんとうまく活用しているのである。「育成」とか、あるいは「ハック&スラッシュ」とか、そういうものが好きなひとは是非プレイして欲しいと思う。

※正直「ループもの?オタクが好きなやつじゃん」と憎まれ口を叩きたくなる自分がいるのは内緒です。
Posted 10 March, 2021. Last edited 10 March, 2021.
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14.4 hrs on record
幻想的で神秘的なビジュアル・音楽を持つ、スクウェア系タクティクスの子供

過去にスクウェアは代表的な二つの「シミュレーション」を出している。それは『タクティクスオウガ』と『ファイナルファンタジータクティクス』である。前者で確立されたスタイルは後者で成長し、一つのスタイルとして定着し、ファンや影響されたゲームが堪えない隠れた人気ゲームとなっている。

本作もそのフォロワーの一人だとも言える。グリッド型の高低差あるフィールドをユニットが移動し、そして敵を撃破しながらユニットを成長させていく。そして、成長しきると別の職業に転職することができる。しかし遠距離攻撃ばかりだと貧弱だし、近距離攻撃だと遠くからチクチクやられる。ヒーラーがいなければ持久戦にやられるし、範囲攻撃ができる魔道士がいなければ数に圧倒されたときに不利だ。従って、出来るだけバランスを取りながら成長させていく必要がある。

だが、本作の最大の特徴は「その世界を表現した、抽象的で神秘的なビジュアルとミュージック」にあるだろう。そして、それを出来るだけ妨げないようにしながら、シンプルでカジュアルに仕掛けつつも、ひねりを加えて出来るだけ退屈しないようにしている……そういう形になるだろう。

バトルはシンプルでありつつも、ベストを尽くすとなると難しい

実際、ユニットのステータスを見ると、驚くほどパラメーターが無いことに気がつくだろう。ユニットには「体力と攻撃力」だけである(正確に言えば、これに風や水といった属性値が付く)。従って、防御力も存在しないし、命中率も存在しない。なので、攻撃をすれば当たる。

多くのシミュレーションでは「命中率」が採用されているが、しかしこれらはプレイヤーの苛立ちのもとになっていた印象もある。「95%」というほぼ必中の確立で外れて、戦線が崩れるといった経験をした人は何人もいるはずだ。そういった「苛立ち」から解放されているので、「どのユニットを動かし、どういう攻撃をするか」に集中できるところは良いところだ(外れたときのことを気にしなくて良い)。

またそれだけだとあまりにもシンプルすぎるため「攻撃されると士気が挫かれて行動が遅くなる」というシステムも採用されている(敵によっては「行動順が早くなる」のもいる)。例えば、目の前に戦士と魔法使いがいて、戦士の体力は減っているけれども、魔道士が次のターンに行動するので厄介だな……と思ったら、魔道士を攻撃して、その行動を遅らせることは可能だ。

一方で本作の特徴となっている「攻撃による地形変化」の部分なのだが……正直、これに関しては深さを感じることはなかった。というのは、地形を利用してまで撃破するといったことを考慮する余裕はなく、どちらかといえば「範囲攻撃したついでに地形が変化する」という印象であるので、あまり期待しすぎるのは良くないだろうとは思う。高低差はほぼ移動のときに意識するだけで、近接攻撃は当たり前のように、高い地形に対してもあたったりする。

しかしこれらにも関わらず、ユニットを出来るだけ生き延びさせるのには苦労する。ユニットが死んでも特段ペナルティは存在しないのだが、経験値が受け取れなかったりするので、出来るだけ生き延びさせたほうがよい。この辺りの「勝つのは案外簡単だが、ベストになると難しい」という、程よいバランスのように感じる。敵キャラもだんだんと一癖や二癖もあるキャラが増えるので、そこも良いところだと思う。

あまり良くないユーザーエクスペリエンス

優れたビジュアルデザイナーが、優れたUIデザイナーではないというのは、このゲームでも当てはまる。とはいえ、十分に整理されているほうではあるのだが、しかしやはりそれでもやりずらさを覚えることはあるだろう。

例えば、シミュレーションに期待されるべき「移動のキャンセル」というのは、このゲームには恐らく存在していない。また、このゲームは回復も攻撃も「味方・敵関係なしに」発動できる。この二つと相まって、割と誤操作を起こしやすく、それで戦線がひっくり返ることはないものの、多少不利になってイライラすることがある。またその結果として「行動してみたら攻撃が射程範囲ではなかった」ということもあり、この点は割と不便ではある。

ミニマップを無くしてあえて不便にしている冒険

本作はオープンワールドを謳っており、言い換えると要は「何処から旅しても良い」ということになる。しかし、このゲームにはミニマップが存在していない。いや「地図」自体は存在しているのだが、本当に地図というだけで、何処にいるか、そして何があるのかということは「地図」と周辺の風景を照らし合わせることになる。

さらに面倒なことに、このゲームは「地図」が複数枚ある。つまり、地図によって情報が分散しており、目的に応じて地図を選ぶ必要がある。これ自体は良いとも悪いとも言えず、一つのコンセプトとして合っているかどうかだろう。だが、方向音痴であったり、地図を読むのが苦手な人は果てしなく苦痛になる作業であると思う。

一方で、実際のフィールドは「ウォーキングシミュレーター」と表現するのが十分なくらいそっけないものになっている。画像は綺麗ではあるのだが、何か驚くものが出てきたり、あるいは興味を惹くものはそれほど出てくるわけではなく、のっぺりした無個性な大地をひたすら歩き回るということのほうが多い。草木は生えてはいるが、砂漠を歩いているかと思うくらい密度がないので、魅了はされるがワクワクしないというところはある。

一応、霧が立ち込めているフィールドの敵を倒したり、あるいは「Fae Weed(妖精の葉)」を掴むことで、その霧を浄化していくというのはあるのだが……この辺りは単純に散歩が好きな人じゃないと、延々と地図を読み解く作業と相まって、正直退屈な気持ちになるとは思う。良くも悪くも「ビジュアルイメージ通り」の尖りようとも言える。

総評・コンセプチュアルだが、十分にゲームとして楽しめる良作

ビジュアルセンスや、ミュージックセンスはとても良く、完成度の高い没入感があるし、バトルシステムは「良くも悪くも標準的」で、普通に楽しく遊べるが、何かもう少し味が欲しくなる感じもある。しかし、問題はない。

問題はフィールド探索部分の、極端にコンセプトが先行している部分であると思う。あまりにも最近のゲームらしくない不親切さがあるだろう。とはいえ、もしビジュアルイメージが自分好みであり、なおかつ英語が苦にならなければプレイする価値は十分にあると思う。

「インディーズゲームとして、自分達が作りたいものを作りました」という意味では高い水準・品質を持っているとは思うし、動画や画像を見てそのイメージに惚れたというのならば、このゲームはその初見を裏切らない鮮やかな世界を描き出していることは間違いないと思う。
Posted 26 February, 2021. Last edited 2 March, 2021.
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2.7 hrs on record
「カルトゲー」「奇ゲー」としての『GoNNER』

多くのゲームの場合「映像はそれほど綺麗ではないのだが、ゲームシステムが画期的だったために人気が出る」という作品がある。だが「ゲームシステムはクソだが、映像や音楽があまりにも優れていたために、人気が出る」という逆のパターンもまた存在している。それが恐らく『GoNNER』だ。

一応、なんどか再インストールして、確認プレイはしているものの、何度やっても『GoNNER』というゲームはビジュアルセンスは感じられるものの、アクションゲームとしては面白くはない。要は自分にとって典型的な「好きになりたいが、どうしても好きになれない」というゲームがなのである。

アクションゲームとしてのステージのセンスなさ

まず自分がアクションゲームとして面白いと思う部分は「慣れてくるとスムーズなアクションを繰り返し、次々と敵を倒していき、ステージの障害物を超えていく」という部分にあると思う。『GoNNER』も、別段操作性は悪くない(むしろいいほうである)のだが、ステージデザインがフラストレーションが貯まるように出来ていて、いまいち気持ちよくない。

一面を見てみよう。このゲームでは壁ケリをすることで壁を伝って登ることが出来るのだが、隙間が一キャラ分しか空いていない。片方にカタツムリが這っている。壁ケリで登ろうとすると、カタツムリにあたってダメージを喰らう。なので、一度待つ必要がある。だが、待っているとテンポが悪くてイライラする。

さらに一面のボスステージに入ると、急に狭くなる。このゲームにおいては、一度ダメージを喰らうと頭を落とし、その状況でダメージを喰らうと一発即死である。そしてボスステージにおいては敵が割とすし詰めなので、一発喰らうと頭を拾ってあたふたしていると死亡。つまり、入って一発でキメる必要がある。

でまあ、二面まではいったのだが、二面は二面でただ広いのだけど、上下に分かれている意味がほとんどなく、無駄足になってしまう感じがある。さらに素直に壁ケリできない鼠の返しがついているわ、踏み台にするための浮雲を待たないといけないわで、全体的にテンポが悪くなったという印象がある。

なんていうか「難しすぎるから夢中になれない」というよりも、ステージの自動生成部分に甘いところがあって「夢中になっているときに冷めさせるギミックが多すぎる」という部分があるように思える。だからこそ「もういいや、先に進めなくても」と萎えてしまうのは否めない(クリアの実績が低すぎるのも、難易度というよりはこういう冷めてしまうところにあると思う)。

映像・音楽・そして世界観の素晴らしさ

しかし、にも関わらず『GoNNER』は高評価である。

それはアクションゲームとしてのステージセンスのなさを圧倒的に覆すくらいに、ビジュアルセンスと音楽が圧倒的に良いのである。そして、ビジュアルセンスと音楽のせいで、なにか「つまらない」というと、何かこっちが見落としているんじゃないかと不安にさせるなにかがある。

その一つにまずその独特なシステムが挙げられる。例えば、ダメージを喰らえば頭やら装備を落とすに及ばず、二段ジャンプをするさいには、足場を一度作ってからジャンプするだとか、あるいは一面と二面の間にいる宇宙鯨の愛嬌、あるいはプカプカと浮かぶ浮き草など、その世界観は幻想的で独特だし、キャラクターは不吉なくせにカワイイ。

さらには、妙に陽気でヘンテコなクセになるBGMがあるし、カラフルではあるのだが、何処か憂鬱で暗く、とはいえ明るいとしか言えないような絶妙な塩梅の風景。キャラクターの周囲しか壁が見えないのも相まって、いい雰囲気である。エフェクトも敵もどこかユーモラス。それらは、他のゲームでは見たことがないくらいには完成度が高く、独特であるといえる。

そして、エフェクトや揺れに関しても、妙に爽快感がある。それは敵が妙に詰まってはいるからで、上手くやれば気持ちよくなれる。操作性も程よく気持ちよくやれる。だが、その操作性を活かしきれているかというと妙に活かしきれていない。

総評・ゲームとしてのオーラ

さて、現在ストアには「(GoNNER2 Out Now!)」という名前が出ている。その続編である『GoNNER2』といえば、2021/02/26現在、レビュー数が42であり、高評価は78%と善戦しているとは呼べない。(Nintendo Switchでも配信されているので、恐らく購入が分散している可能性もある)

『GoNNER2』自体が面白いかどうかはともかくとして、『GoNNER』はどうしても「これだけでいいかな」という感じをさせてくれるゲームなのだ。そういう「ビジュアルデザイン」は得意だけど、「ゲームデザインは圧倒的にダメ」という感じが透けて見えている感じはある。

ゲームというのは決して「ゲームシステムが面白い」というだけではなく、「ゲームがまとっているオーラが面白くさせる」というのがあると思う。そういうのを「雰囲気ゲーム」と呼んだりするが、端的に雰囲気だけというのにはもったいない気もしてくる……良くも悪くも、『GoNNER』とはアーティスティックな作品だと思うのである。だからこそ、その難易度と相まって『GoNNER』は「奇ゲー」「カルトゲー」として相応しいのだ。
Posted 25 February, 2021.
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22.7 hrs on record (15.6 hrs at review time)
神はサイコロを振るが、人間はサイコロを収束させる

『Yahtzee(ヤッツィー)』という、サイコロゲームの中でも有名なゲームが存在している。このゲームは、サイコロを振り、その出目でポーカーの役を作り、その役の点数を競うゲームである。ただしどんな出目が出たとしても、表に点数を書き込まなければならず、すべての表に点数が埋まった時点で、その総合点を比べ合い、高かったほうが勝利となる。

もちろん相手はサイコロなので「運ゲー」の要素はあるが、単なる「運ゲー」というのは深みが出ない。ヤッツィーが愛されているのは次のような考える要素(技術介入部分)があるからだ。

ヤッツィーではサイコロの出目を振り直すこともできるが、例えば、「2・3・6・6・4」みたいな出目だった場合、「6」を振って「5」を出せばワンチャンスというのも考えられるし、あるいは「2・3」を振り直してフルハウスも出来る。ストレートに比べて、フルハウスのほうがサイコロ二つのために、あまり出ない印象も受けるが、後者は6のフォーダイスも狙うことができるとも言えるし、一つ振り直すより、二つ振り直したほうが出目の総点は上がるので、端的に出目の総数を書き込む「チャンス」という役に押し込んでもいい。

なぜ『Yahtzee』を最初に出したかというと、『Yahtzee』の面白みというのは、「良い役を目指しながらも、しかし同時に如何に保険を張るか」というところにあると思うからだ。つまり「役が出れば最高だが、役が出なかったときの事故をどれだけ減らすか」という試行が求められるのである。

優れたダイスゲームの共通点としての「事故をカバーする」という発想

幾つか好きなダイスゲームというのが存在しているが、それらに共通して思うことの一つとして、面白いダイスゲームというのは「期待するよりも事故ををカバーする」というところに重点が置かれているように思うのだ。そして、ダイスゲームがどうしてもカードゲームよりも遅れを取ってしまうのは、「事故をそもそもおきなくする」というより、「事故をカバーする」という発想はあまりプレイしていてスッキリするものではない。

だが、同時にダイスゲームというのはある決定的な長所というのが存在していると思っている。それは「ダイスをたくさん振るのは楽しい」というものである。ダイスはとにかく振るとワクワクするものだ。そして、振り終わったあとに、「まあ、まあ、こんなもんだよね」という風にちょっとシらけた気持ちになったりする。この辺りの「ダイスを振って楽しい」と「ダイスを振った結果は楽しくない」という相反する側面を如何にゲームに落とし込むかだと思う。

不公平な確率論のパズル

『Dicey Dungeons』をプレイしていて思ったのは、例えば良く比較される『Slay the spire』とやはりプレイ感が違い、「多くのサイコロをどれだけ間口広く受けることができるか」というところにポイントがあるように思われる。『Slay the spire』ならば、「理想の確率までにデッキを調整する」のが重要だけれども、『Dicey Dungeons』ならば、「あらゆる確率に対応する」というところがミソになっているように思う。いわば「不公平な確率カバーのパズル」をやっている感じになる。

『Dicey Dungeons』に書かれる不満というのは、言ってしまえばダイスゲーム全般に対する不満という印象という感じも強い。99%の命中率でも外れるときは外れる某ゲームのように、「あらゆる確率に対応する」といったところで、カバー率の問題であって、そのから外れるものはいくらでも出てくる。敵は容赦なく6の目を出して、こっちの体力をゴリゴリ削るということもあるわけで、そこに不公平さを嘆く人も多い。(もちろん、それは確率操作部分の「意図的な不公平さ」の可能性もあるだろう)。

個人的にはプレイしていてそれほど「バランスが崩れている」とか「調整不足」だとかは感じなかった。さすがに2年前の作品だから、荒ぶりそうなシステムにしては、割と各職業の能力でカバーできるようになっているし、体力の回復もレベルアップも、効率よくやればいい感じでクリアできそうな気配がある。そして、どの職業もハマれば強いと思える瞬間があって、気持ちよく感じることもできる。なんか大味になりそうなのに、割とちょうどいい味付けだと思う。

しかし、にしたところで相手はダイスゲームだ。

確率にも外れ値は存在するように、このゲームにもそれは存在している。だから、相手のサイコロが荒ぶればあっという間に粉砕されるし、相手がおとなしければ、あっという間に勝てたりする。そこら辺の「ゴリゴリに効率化する部分」と、「残りは運に身を委ねる」をどう評価するかというところで別れると思う。特に後者は「これはどれだけ頑張っても無理じゃないか」という瞬間もあって、そういうところが不満に残りやすい部分になっていると思う。

総評

他のダイスゲームを引き合いにしたり、だらだらとダイスゲームについて語ったのは、『Dicey Dungeons』の特徴というのは「ダイスゲームの楽しいところと、くだらないところ」の両面を忠実にゲームにしていると思うからだ。恐らく『Dicey Dungeons』で不満が出やすいところというのは、ある意味において、ダイスゲームに共通して見えることという印象もある。

『Dicey Dungeons』はスマートフォン版も発売されているが、恐らくSteam版をやる理由の一つにModコミュニティー[itch.io]が存在していることだろう。やり尽くして物足りなくなったら、Modを入れて遊ぶのもいいだろう。ただし、多くのModはv1.9以前のもので、殆どの遺産が作り直しになっているのはちょっと痛いかもしれない。

もう一つとして、『Dicey Dungeons』はミッションにおいて「作者の意図」が見えやすいように出来ている印象を受ける。作者の意図というのは「こういう風にプレイすることが望まれる」というもので、その辺りの意図が透けて見える息苦しさと、あるいは狭さを感じると「なんだこのゲーム」という感じになるとは思う。逆にそれら一つ一つを作者の挑戦状と捉え、前向きにプレイできる人はハマると思う。

サイコロを振り、結果に一喜一憂をするのは楽しい。そういう素朴なダイスゲームの楽しさが、このゲームには存在している。それはこのゲームの素晴らしいところであると思う。
Posted 25 February, 2021. Last edited 25 February, 2021.
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1.2 hrs on record (1.0 hrs at review time)
シンプルにして外交と領土の流動性を表現した佳作

一度本作を購入する前にデモ版[ibedenaux.itch.io]をプレイして「あれ、これは興味深いゲームなのではないか」と思って、支援のつもりで購入。安価ではあるものの、現状としては余りにも「プロトタイプ」すぎる(要はゲームを通じてプレイできる程度)。実際のところは「どちらでもない」くらいが適切だと思うのだが、今後アップデートをしていって欲しいと思ったので、応援のつもりで「オススメする」にしている。

概要

ゲームの概要としては、基本的には一匹の猫を動かして領土を拡大していくというタイプのゲームとなる。一つは勝利条件のためであり、もう一つは自分の力が土地の大きさである程度決まるので、大きいに越したことはない。だが、領土を広げたいのは他の猫も一緒。土地の大きさは限りがあるので、すぐにお互いの土地を塗りつぶしあうことになる。そうなると、お互いに喧嘩が発生する。喧嘩が始まると、当然お互いは悪い印象となって関係が悪化する。

で、これはプレイヤーだけではなく、他の猫たちの間でもひっきりなしに起こる。そこで、他の猫たちの喧嘩に介入することで、「敵の敵は味方」ということで、関係が良い方向に進む。

このような猫の関係がどのようにゲームに影響するか。関係が悪いと、領土はガンガン取られるし、そこらを歩いているとすぐに殴られてしまう。逆に関係が良いと、領土を取らずにいてくれるし、戦いでやられたときは回復もしてくれるわけで、出来るならば良い関係を多くの猫と築きあい、他の猫との優位を築きあげる必要がある。

このように、お互いの猫同士の関係を上手く調整しながらゲームの主導権を握る。それがメインのゲームである。

良いところ

このようにシンプルなゲームではあるが、何処かヨーロッパの領土の歴史を見るような面白さがある。

まず敵対関係が多い猫に喧嘩をしかけることにより、猫同士と仲良くなる。しかし、味方の猫同士が喧嘩しはじめ、どんどんと味方がいなくなる。残った猫も、愛想をつかせ、味方がいない状況になり、いつしか他の猫に主導権を握る。

シンプルながらも、外交関係と領土の儚さが良く表現されており、自分が購入に踏み切ったのもこの点に非常に感銘を受けたからだ。

悪いところ

で、2021/02/24の悪いところを書いておこうと思う。

●アイデアの突き詰めの甘さ

率直に言ってしまえば、このゲームというのは正直「プロトタイプ」という評価が適切で、個人的にはキックスターターで出資者向けにプレイ出来るソフトの段階みたいな印象が強い。それは単純にボリュームという問題ではなく、根本的にフルリリースに欲しい「基本のアイデアからどれだけふくらませることができるか」という部分に欠けている。恐らく、コンテンツ量としては1時間から3時間くらいで、それ以上は特にやることは無い印象を受ける。

このゲームにおいては「キャンペーンモード」を作って、様々な変則ルールで遊ばせる可能だろう。「常に1対5」というのも面白いだろうし、「バトルロワイアル」みたいに、段々とフィールドが狭くなっていくのもいいだろう。あるいは手に入る職業とスキルがレベルアップ毎にランダムになるというルールあってもいいとは思う。

この段階だと作者が面白いと思ったところだけを実装していて、いわゆるプレイヤーを出来るだけ楽しませようとする膨らませかたに欠けていると思う。

●他の猫の喧嘩に首を突っ込むのが簡単すぎる

他の猫が争っていた場合に、出来るだけその喧嘩に首を突っ込むことで、敵の敵は味方方式で仲良くなれるという話をした。だが、その喧嘩に首を突っ込んだところで、あまりリスクはない。あえていうと、喧嘩が長引いて領土の拡張に遅れるくらいであって、仲良くなれれば、その猫が傷を癒やしてくれたり、領土を占拠しなくなるので、猫同士が争うことに首を突っ込むことは、別段リスクではない。

他の猫と仲良くなることは「ローリスク・ハイリターン」ではあって、もちろんその行動を促したいからそういうデザインにしているのかもしれないが、しかし友好度の高さによって、傷を癒やしてくれたりしなかったり、あるいは他の猫と喧嘩して味方してくれるか、みたいなグラデーションがあったほうが、もう少し良いのではないかという気はする。あるいは極端に仲良くなると、領土が合併するとかあっても良いと思う。

●ゲームの収束性が不明瞭

ボードゲームにしろ、ストラテジーにしろ、どのようにゲームが収束していくかがキモだったりするのだが、このゲームの場合はゴール設定だけがされており、ただモグラたたきのように領土を取ったり取られたりを繰り返しているだけだったりするので、「あれ、これゲームが終わるのかな?」と疑問に思うことのほうが多い。このあたりはタイムリミットか何かを設けて「ゲームが終わる」という保証をなんらかの形で作ったほうがよいように思う。

●職業が上手く機能していない

俺は「Large・Hard」を一応クリアしたのだが、しかし実はジョブは殆ど利用していない。最初の「戦士・メイジ・アーチャー」くらいで、それ以上の上級職は殆ど使うことがなかった。この三つは無限に強くなってしまうからで、ある程度でLv上昇がとまって、強くなりたければ次の職業に進む、くらいの強制力がないと、最初のジョブだけでいいじゃんとなってしまうので、そこはもう少し考慮したほうがいいように思う。

総評・まだ突き詰められる

というわけで、この手の抽象的な表現は、何処かアブストラクトゲームのような雰囲気があって好きではあるのだが、しかしゲームとして見た場合、まだ突き詰めることが出来るものが多いように思う。ポテンシャルを考慮した場合、「おすすめできる」なのだけど、悪いところを挙げてみると思ったより「おすすめできない」という部分が多いので、この辺りの評価は今後の更新頻度次第で変えようと思う。現状はデモ版をプレイしてみて、興味深いと思った人は応援のつもりで購入してみてもいいのかなとは思う。
Posted 24 February, 2021. Last edited 24 February, 2021.
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7.9 hrs on record (6.3 hrs at review time)
Early Access Review
郊外版・ぼくのなつやすみ

幼年期の頃、俺の周囲には大きいTSUTAYAと、その近くにゲームセンターがあった。一階のガラス張りで見える場所には景品ゲームが置いてあり、奥にはコインゲームがある。二階はアーケードコーナーだ。景品コーナーには、大きなプリッツだとか、あるいはよくわからない外見だけキラキラの腕時計だとか、元ネタを知らないタオルとかがあった。俺は少しのゲームをやっては、帰り道にCDを借りてMDに録音しなおしていたことを覚えている。

アメリカのアーケードゲームにどのような歴史があるかは知らない。例えば、本作のテーマの中心となっている、ゲームでスコアを叩き出した褒美としてチケットを貰い、景品と交換するといったアーケード文化がどういうものかはわからない。そもそもアメリカなんて行ったことはない。だから、本来はこのゲームセンターに懐かしさを覚える理由は無いはずだ。

しかし、にも関わらず……サバイバルモードをやってみたところ、その雰囲気は俺が生まれ育った郊外の雰囲気と驚くほど似ていた。妙に寂れているのに、派手な外見のゲームセンター。その割にはジャイアントというほどでもなく、ちょっと育ったガキ大将くらいの大きさしかない。ショッピングセンターには、子供を少しだけおとなしくさせるためのゲームが置いてある。俺のときはジャンケンメダルマシーンだったように思う。

ゲームの「リアリティ」については諸説様々あるだろう。美しくモデリングされた風景であるとか、あるいは優雅に動く動物だとか、あるいは周囲を舞う木の葉だとか。このゲームの開発は個人でおこなれているので、そういったものは一切存在しない。だが、それでもこのゲームには記憶を生々しく喚起させるものがある……。それはアメリカだとか全く関係がない……。

例えば、ゲームセンターで、ひとしきり遊んだあとに、ロボットたちがエアホッケーに興じているのを観戦したりして時間を潰したり、あるいはゲームセンターの帰り道、門限ギリギリで、自転車で如何に急カーブを曲がるかに挑戦して派手にずっこけたり、あるいは明日派手に遊び回るために、アルバイトを一日かけてこなしたり、遠くのゲームセンターの帰り道、バスの窓から夕日に照らされる遊園地の横顔を見たり……。

他のレビューからになってしまうが、本作のサバイバルモードは、「少ないおこづかいをやりくりし、どのゲームをプレイするかを真剣に考える『ゲーセン少年シミュレーター』である」としてプレイするのが良いように思う。このゲームでは、ゲームセンターの景品を売りさばく事ができるのだが、「景品を如何に稼ぎ、売りさばくか」といったような、効率性であるとか、そういうものを追い求めてしまうのはゲーマーの性だが、それとは無関係にここにあるのは懐かしいような、気恥ずかしいようなノスタルジーであり、それを味わいながらフィールドを散策するのがいいのだと思う。

このゲームは自分が思うところの「ぼくのなつやすみ」に近い。しかも、幼馴染も優しいおばあちゃんもいない、何かあるようでなにもない、特にいうべきことのないなつやすみ。我々は「ノスタルジーといえば田舎である」という、インスタントな価値観に触れすぎてしまっている。それはコンビニで売ってある「おふくろの味」くらい作り物すぎる。

ここにはもう一つのなつやすみがある。遊びたければちょっとしたお手伝いをしておこずかいを貰い、バカだから貯めるなんてことをせずに、全額ぶっこんで、こんなことなら最新コミックでも買うべきだったと後悔するような、そういったくだらないのなつやすみ。告白する美少女も、何やら気の合う同級生も存在しない。遊園地に一人で行って、レールの錆びついたローラーコースターを眺めるような、そんな寂しいなつやすみ。

当時は灰色だったかもしれないが、しかし今になって思えば全然カラフルだった。なにせ、Steamで悲壮な痛いレビューを延々と語っているよりも、何気ないこんな単純なゲームで面白がっていたのだし、本人自身にも可能性はあったのだから。それはこの若くて積極的に更新が積み重ねられているゲームほど、希望があったのだ……。

優雅で感傷的なゲームセンター

恐らく、個人のインディーズゲームが有数のチーム開発のゲームに対して持ちえる強みというのは、作品性であり、文学性であると言えるとするならば、このゲームは立派にそのハードルを飛び越えている。

例えば、草刈りのバイト先に行くとする。すると、人懐っこい犬がかけよっている。その犬と、仕事そっちのけで犬とボールで遊ぶなんてことだって出来る。そういう明らかに余計だが、しかしそのゲームが持ちうる本質にふれる細部というのが、恐らく「ゲームの文学性」というものだろう。『The Coin Game』っていうアメリカ文学小説ありそうだし……。

ここには明らかにちょっとシニカルな愛が存在している。奇妙な外見のロボットたち、安っぽくポップするフォント、微妙に欲しくない景品……。それらは決して他のプロダクトに比類できるほど完成されたものではなく、不格好ではある。だが、それは何処か温かみと人間味があるもので、好きになれる類のものだ。

そして、本来こんな真面目に語るゲームではないこともわかっている。

私達がやるべきことは、子供の頃に戻って、ただくだらない景品のために、目の前の機械に数ドルをぶちこんで笑ったり、舌打ちしたりすればいいだけなのだ。ただ、それだけで十分なのだ。
Posted 21 February, 2021. Last edited 21 February, 2021.
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10.5 hrs on record (6.7 hrs at review time)
エイリアンに汚染された宇宙船を特殊清掃する賽の河原詰みゲーム

宇宙船に引っ越してきたプレイヤー。新生活にワクワクしながら扉を開けてみるものの、部屋は汚れに汚れ、エイリアンが繁殖しつつある部屋だった。これは明らかに事故物件では……。そうは思っても、このままだと住むことはままならぬので掃除することにする。しかし、掃除している間にも腹は減るし、疲れも増える。空腹と疲れを管理し、宇宙船を綺麗にしきって、宇宙生活を満喫できるようにしよう!

……とまあ、こういうコンセプトであって、確かに最初見たときは面白く見える。というより、根本のゲームプレイは全くつまらないわけではない。典型的な言い回しをすれば「ポテンシャルはある」ものであるのだけれど、しかし幾つかの点で「オススメできない」ものになっている。

ひとつ、部屋を掃除しては父のため……

結論から言ってしまうと、このゲームの問題点は「一度拮抗状態に入ると抜け出すことが出来ず、勝ちもしないが負けもしないという状況が延々と続く」という点に尽きると思う。

プレイヤーがイライラを募らせる理由は幾つかあるのだが、その一つには「ゲームの展開が何もおこっていない」というのがあると思う。このゲームが典型的にそうだ。「勝つわけでもないが、負けるわけでもない」という中途半端な状況に陥りやすい感じが、このゲームにはどうしてもある。

ゲームの目標は「部屋を綺麗にする」ことなのだが、綺麗になればいいかというとそうではなく、汚れというのは隣の部屋から侵食する。というのも、汚れはエイリアンの卵を生み、孵化したエイリアンは部屋を汚す。このように一つの汚れは綺麗にした部屋のドアを侵食しはじめ、ほっとけば綺麗にした部屋をまた一から綺麗にしなくてはならない。

一種のタワーディフェンスのようではあって、なるほど「何処の部屋からどうやって綺麗にしていくか」を考える必要があるんだな、と思うわけで最初は楽しかったのだが、しかし明らかに綺麗にした一角からエイリアンが侵食しはじめるのである。おかしいなと思って見ていると、どうやらこのゲームにおいて、換気扇のある部屋は定期的にそこからエイリアンが出てくるように出来ているらしい。

確かに「一角から部屋を綺麗にしていく」というのを単純にしないための工夫なのかもしれないけど、そうなると片方の部屋を綺麗にしたら、片方の部屋が汚くなるを繰り返すようになる可能性がある。そうなると、賽の河原のように両方の部屋を行き来しなくてはいけない。

さらにタチの悪いことに、エイリアンは部屋を汚すだけではなく、部屋に設置した電池を破壊する(壊されそうになったら一度外すことで、これを回避できる)。この電池を設置できるところに全部設置する、というのが勝利条件で、さらにこの電池を作るためにはゴミ袋かエイリアンをだいたい5体から6体ほど換金しなくてはならなくて、非常に面倒くさいのである。つまり、資金的にもプラスマイナスゼロの状態がずっと続くということもありうる。

この状況を打開するための人手を解消するロボット(掃除や水やりを肩代わりしてくれる)というのが存在するのだが、それは実績を解除しないとアンロックされない(そして、この実績もソロだと実績解除目的以外ではやらないだろ……というもの)。また、エイリアンを攻撃してくれるペットの犬が存在するが、こいつは汲んでいた水を勝手に飲む。水を飲まれるとこっちの計画が台無しになるので、飲んでいる水を取り上げる畜生プレイをすることになる。

ではそういう状況を打開するために戦略的に考えるべきかというとそうでもなく、ハイペースなゲームであるので、考える前にまず動け、という形になる。もともと協力ゲームのタイプには混乱した状況を楽しむというのがあって、これもそうだと言える。そうなると余計に何か手を打つというのかしにくくなる。自分で敗北を認めるのはなんとも言い難い屈辱さがある……。

結論として、ミディアムくらいの部屋ならとにかく防菌スプレー的なものを散布しまくるという力技になるのだが、ミディアムをそうやってクリアした段階で「このゲームはソロでやるのは苦行だ……」という気持ちになったのであった。

野良マッチング(ランダムマッチング)が消える可能性が高い

最新の開発者の方針によると、野良マッチング機能(ランダムマッチング)が無くなるという話のため、さらにお薦めできないように思える。翻訳して読んでみたが、善意を持って述べれば「ランダムマッチが機能していると言えるほど、プレイヤーがいるわけではない。殆どのプレイは友人とのものであるので、Discordのコミュニティーに参加して募集したほうが生産的な待ち時間になるんじゃないか」ということになる。そして「ランダムマッチで人が見つからないというのはとてもイライラする経験なので、良くない」ということである。

「腕が痛ければ腕を切り落せばいい。少なくとも腕は無いので腕が痛いというわけではないでしょ」という話であるような感じがあるし、色々な思いがあるけれど、推測するのはよそう。問題はこれらは英語で普通にコミュニケーションできて、しかもDiscordに参加して積極的に発言できるようなタイプの人しかこの協力ゲームをプレイできないということで、俺が協力ゲームを作ってしまう人たちの何が嫌いって、ゲーマーという人種がみんな明るくてポジティヴで初対面相手に英語をハキハキと喋れる、友達が多い奴らだと思っているところだ(これは開発者・ゲーマー両者に対する完全な悪意ある偏見と悪口である)。

それはともかくとして、個人的にランダムマッチには好印象だったため、「クロスプラットフォームでユーザーベースが擬似的に増えれば、ワンチャンあるかもなあ……」くらいに思っていたのだけど、それも無くなる可能性を示唆されると、かなり薦めにくいように思う。

総評・リアルで出来る友達がいるならいいけど、ソロでも楽しめるかというと疑問

で、恐らくこの手の拮抗状態というか冗長性は、リアルで話しながら出来る友達がいるならば苦にはならないのだが、ソロでやると何をやらされているんだという気持ちになる。だんだんと状況が打開できずイライラがつのり、目の前で勝手に水を飲んでいる犬を蹴飛ばしたくなる気持ちになったりした。犬は決して悪くないんだ、悪くない……。

友達がいないプレイヤーの場合、こういった協力プレイというのは「野良かソロでどれだけできるか」ということになるのだが、このゲームの場合、将来的に野良は削除される予定のようだし、ソロは楽しくない。英語圏ならばDiscordに入って募ってもいいのだろうけど、英語をしゃべれない俺にとっては、それは限りなくハードルが高い。あるいはもともと協力ゲーム用に調整されたゲームを、ソロでプレイしているぼっちのお前が悪いとも言える……。

ただやってみた感じ、割と淡々と出来るゲームという側面はあるし、修行という名の掃除をしたい人にはお薦めなのではないでしょうか。
Posted 20 February, 2021. Last edited 20 February, 2021.
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54.9 hrs on record (13.7 hrs at review time)
Early Access Review
デジタル版ボードゲームなローグライクRPG

ガイドも書いたのでよろしければどうぞ[//])

何かちょっとしたボードゲームでもやりたいなと思って買ってみると、意外とボードとかコマとか小冊子とか付いていて、良い意味でボリュームがあって得した気分になることがある。アナログなボードゲームならば、箱の大きさで見分けが付くが、デジタルはそういう感じではないわけで、本作も何気ない「デッキビルディング」だと思って買ってみたら、意外にいろいろなものが付いていて驚かされてしまった。

確かに、メインのバトルは「カードを使用して色々やる」といったタイプのゲームではあるのだが、しかし本作はどちらかといえば「昔ながらのTRPG」という趣が強い。

要はフィールドを旅して仲間を集め、イベントをこなし、武器やスキルを強化し、目的の敵を倒すといった感じのものである。カードも、キャラクター自身が持っているスキルのほかに、装備特有のカードセットがあって、その二つで山札が出来て、キャラごとに山札が違うので、合計で三つの山札が出来る。

バトル自体もちょい複雑で「なんだこれ、ちゃんと出来るのか」と思ったりするのだが、慣れてくるとちゃんとした立ち回りがあって、いい塩梅で頭を使う部分がちゃんとあって、一つ一つのバトルが面白いのである。簡略化されがちなカードゲームの中では、ちゃんとシミュレーションというかストラテジーしているなという感じがあって、良い感触である。

恐らく一番表現として向いているのは、昔ながらのTRPG、あるいはゲームブックよりのRPGを現代風のゲームデザインで表現したという感じであって、個人的には好印象であり、さらには開発も週一でアップデートするなどの活発な動きをしている。恐らくデッキビルディングと安直にいうよりは「デジタルなボードゲームのローグライク」として見たほうがいいだろうと思う。

フィールドを散策する楽しみ

なぜ「ボードゲーム的なローグライク」というのかというと、散策部分が今ではあまり見ることのない「フィールドを散策して、イベントの場所へ向かう」というタイプであるからだ。しかもダラダラとフィールドを散策していると疲れが溜まり、士気が下がっていくので、夜になったら安全な場所で休憩を取ったりするような工夫が必要になる。

またイベントに関しても、闇雲にいい結果を選んでいるとダメである。そうすると、例えば「負傷」をしてしまった場合、その負傷カードというのがデッキに潜り込んで、デッキの回転率を悪くする。また「疲れ」もできるだけないほうが、有利にバトルを運ぶことができるし、場合によっては仲間も増やせるので、できるなら食料も豊富に確保しておきたい。あるいは、戦力がそれほど安定していない中でバトルするのも、少し考える必要があるだろう。

このようなリスクとリターンを天秤にかけながら如何に効率よくフィールドを廻っていくかを考える必要があり、それはどことなく「冒険感」が出ていて、良い没入感が出ているように思う。

装備のビルドが悩ましく面白い

基本はデッキビルディングなのだが、もう一つの特徴として、このゲームに置いてはキャラクターが持つスキル以外にも、装備品に対してカードセットが用意されている。言い換えると、山札になるのは「キャラクターのスキルに、装備品のセットを足したもの」という形になる。

最初のうちはそもそものカードが少ないし、アーマーなどで体力を出来るだけ増やしておきたいので、装備品をガンガン付けてはいくし、強化もしていくわけなのだが、途中で手に入ったレアの装備を何でもつければいいというものではない。カードが増えれば回転率が落ちて事故りやすくなるので、出来ることならばキャラのテーマにあった装備を選んだりしなければならない。場合によっては、装備に付属するカードを消して軽量化を測る必要がある。

いわゆる「カードによる装備の特徴の表現」というのが上手く出来ていて、闇雲にレア装備を付けたとしても、山札が肥大するところは、端的に重装備は動きが鈍くなるという表現とも言えるし、またただレア装備集めゲームにしないという点でも、ちょっと面白い部分だろうと思う。

デッキも重要だが、ストラテジーも重要

さて、このようにデッキを作って戦いに挑むわけだが、このゲームにおいてバトルというのは、マス目のフィールド上でそれぞれのキャラクターが書かれたコマを動かして、戦ったり守ったりする必要が出てくる。

バトルにおいては「カードの効果を使用する」といった他に、「カードを破棄する」ことによって、カードを使用するために「Willpoint」と移動ポイントを得ることが出来る。もし移動せず、また「Willpoint」が余っているならば、その移動ポイントは「ブロック」として、攻撃を受け止める代わりのものになる。

このゲームにおいて特徴的なのは、「カードを使用する」ということよりも、どこまで「カードを破棄する」かのほうが重要になる。例えば、移動して敵のところに行けば殴れるが、しかし単身で突入してしまうことになるとする。単身で突入すると、敵に囲まれてしまう。敵に囲まれたとき、近接攻撃だと、隣り合ったユニット同士が攻撃に参加してボコボコにされる。なので、一回だけ移動して味方と連携をとりながら、ブロックを稼ぐ……といったようなことを考える必要がある。

この辺りの「カードが単純にメインではない」という部分は面白いところで、いわばちゃんと陣形などを考えながら、「使うところは使う、捨てるときは捨てる」というのがはっきりしており、その辺りをちゃんと考えながらプレイするのは新鮮でありながら、楽しいものである。そして、このメリハリが単なる「カードゲーム」という感じではなく「ボードゲームしている」という感覚に良い意味でさせてくれる(カードゲームとボードゲームには優越や上下はないんだが)。

悪いところ・過度な複雑さ

良くも悪くもいろいろな要素が調和していてやりがいを感じさせてくれるのだが、しかし同時にあえて悪いところをいうならば、結構暗黙の了解で覚えなければ有利に運ばないことがあまりにも多い。敵の特徴がまず一つ挙げられるだろうし、そして他にはバフ・デバフが何を示しているのか、あるいはどういう順番でカードを使用すると最も効率がいいか、このイベントでは何が手に入るのか……などがそうである。このゲーム、結構初見殺しが多く、普通にやっていると木っ端微塵になってしまう。

この手の複雑さは没入とやりがいを生み出してはいるものの、しかし学ぶことが多いことは否めない。ローグライクは「プレイヤーの経験がそのキャラのレベルになる」ということが良く言われるが、逆に言えば「経験が溜まるまではボコられる」ということになる。強敵にボコられるわ、負傷は付きまくるわ、手札は廻らねえわ、これはいったいどうすればいいんだ……と思うことが多少あるだろう。その点で苦手だなと思う人もいるはずだ。

さらにいうと、そういった複雑さの結果として、少し運ゲーのようにも見えるのが難点だろう。ゲームの時期によっては、出来るだけ会いたくない敵というのは少なからず存在し、そういう相手に出会ってしまった場合、パーティの構成次第によっては即投了ということもありうる。理不尽さはローグライクの華ではあるが、しかしにしてももう少しなんとかならんかと思うことはちょくちょくある。

総評

カードデッキビルディングにも、様々なアプローチが成されてきたわけだけれども、恐らく最もRPG的というか、ボードゲーム的なゲームであろうと思う。一方で、ボードゲーム的になりすぎたが故に、多少複雑なところも多く、経験して覚えることが多いとも感じるが、しかし他にはないプレイ感ではあるので、とてもやりがいがあり楽しくプレイしている。

ただ一つ困ったことに現状としては日本語版が存在しないことではあるので、英語に忌避感が無く、ボードゲームとか、あるいはそういうアナログでプレイするRPGというのが好きな人、あるいは試行錯誤するのは苦じゃないぜ、という人に限りオススメだ。カードデッキだけじゃ物足りないなと思っている人は、ぜひ手にとって遊んでほしい一作である。開発者が積極的にアップデートを繰り返しているので、その点でもオススメです。
Posted 18 February, 2021. Last edited 11 March, 2021.
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