突如（とつじょ）、瞑目（めいもく）して黙（だま）り込（こ）んだスバルに少女（しょうじょ）は物言（ものい）いたげな顔をする。

　在昴冷不防地闭上眼睛陷入沉默的时候，少女好像想说什么的样子。

　しかし、彼女がその口を開くより先に、スバルが指を天に突きつける方が早かった。

　但在少女开口之前，昴抢先一步用手指着天空。

　左手を腰（こし）に当て、右手を天に向けて伸ばし、驚く周りの視線を完全に意識から除外（じょがい）して、スバルは高らかに声を上げる。

　他左手插腰，右手直指天际，毫不在意周围的惊讶视线，放声大喊。

　「俺の名前はナツキ・スバル！　色々と言いたいことも聞きたいことも山ほどあるのはわかっちゃいるが、それらはとりあえずうっちゃってまず聞こう！」

　「我的名字是菜月・昴！我知道你有很多想说的话和想问的事，但在那之前先听我说！」

　「な、なによ……」

　「干、干嘛啦……」

　「俺ってば、今まさに君を凶刃（きょうじん）から守り抜いた命の恩人！　ここまでオーケー！？」

　「本大爷，是方才保护你不受凶刃所伤的救命恩人！到这边OK吗」

　「おーけー？」

　「喔...可？」

　「よろしいですかの意。ってなわけで、オーケー！？」

　「就是可以吗的意思。重来一遍，OK吗！？」

　ＯとＫを上半身の動きで表現するスバルに、銀髪の少女はひきつりながらも、「お、おーけー」と応じる。

　昴活动上半身比出O和K，银发少女表情僵硬地回答：「喔、喔可。」

　そんな彼女の態度にスバルはうんうんと頷き（うなずき）、畳みかけるように続ける。

　昴点头同意她的态度，然后继续低下头。

　「命の恩人、レスキュー俺。そしてそれに助けられたヒロインお前、そんなら相応の礼があってもいいんじゃないか？　ないか！？」

　「身为救命恩人、救援者的我，向被我所救的女主角要求相应的谢礼不为过吧？对吧！？」

　「……わかってるわよ。私にできることなら、って条件付きだけど」

　「……我明白了。但前提是必须要是我办得到的事。」

　「なぁらぁ、俺の願いはオンリーワン、ただ一個だけだ」

　「很——好——我的愿望只有一个，Only One！」

　指を一本だけ立てて突きつけ、くどいくらいにそれを強調。そのあとに指をわきわきと動かすアクションを付け加えて少女の不安を誘い、喉を鳴らして悲愴（ひそう）な顔で頷く彼女にスバルは好色（こうしょく）な笑（え）みを向ける。

　伸出一根手指摆在面前，喋喋不休般反复主张。手指来回移动，用多余的动作引起少女的不安，装出色眯眯的笑容面向她，少女喉咙微微发出声音，用悲怆的表情点头。

　「そう、俺の願いは――」

　「好，我的愿望是——」

　「うん」

　「嗯！」

　歯を光らせて、指を鳴らして、親指（おやゆび）を立てて決め顔を作り、

　牙齿反射光线，弹响手指，立起大拇指做出帅气的表情。

　「君の名前を教えてほしい」

　「——请问芳名？」

　呆気（あっけ）にとられたような顔で、少女の紫紺（しこん）の瞳が見開かれた。

　少女惊讶到整个人呆住，蓝紫色的双眼瞪得大大的。

　しばしの無言が周囲を支配し、決め顔を維持するスバルは静寂の中でかすかに震える。

　片刻的沉默使一切寂静，昴的眼神坚定，在无声中微微颤抖。

　外した感が半端（はんぱ）ない羞恥（しゅうち）となって込み上げてくるが、こういう状況で周りがリアクションする前にイモを引くのは最悪のパターンだ。

　错过了什么的感觉让我感到无比羞愧，但在这种情况下，在周围的人做出反应之前这是最糟糕的事情。

　故に黙り、スバルは彼女からのアクションを待つ。

　因此，昴保持沉默，等待她采取行动。

氷塊（ひょうかい）でも氷柱（つらら）でも冷凍ビームでもなんでもこい。やっぱ冷凍ビームは勘弁（かんべん）な。

　冰块、冰柱、冰冻光束，什么都可以。果然冰冻光束还是算了。

　「ふふっ」

　「呵呵！」

　そんなスバルの極限状態すぎる高速思考は、ささやかに届いた笑声に打ち消された。

　昴用尽全力的思考被一声轻笑抵消了。

　口元に手を当てて、白い頬を紅潮させ、銀髪を揺らしながら少女が笑っている。

　手掩着嘴角，白色脸颊泛起红潮，晃着银发的少女笑了。

　それは諦めた笑みでもなく、儚げな微笑でもなく、覚悟を決めた悲愴なものでもない。ただ純粋に、楽しいから笑った。それだけの微笑みだ。

　不是自暴自弃的笑容，也不是短暂虚幻的微笑，更不是怀着觉悟的悲怆笑颜。而是纯粹因为快乐而笑，单纯无比的灿笑。

　「――エミリア」

　「——爱蜜莉娅。」

　「え……」

　「喔……」

　笑い声に続いて伝えられた単語に、スバルは小さな吐息だけを漏らす。

　听到接在笑声之后的单字，昴只是小声吐气。

　彼女はそんなスバルの反応に姿勢を正し、唇に指を当てながら悪戯っぽく笑い、

　昴的反应令她端正姿势，手指贴着嘴唇俏皮地笑。

　「私の名前はエミリア。ただのエミリアよ。ありがとう、スバル」

　「我的名字是爱蜜莉娅，就只有爱蜜莉娅而已。谢谢你，昴，谢谢你救了我。」

　「私を助けてくれて」と彼女は手を差し出した。

　“谢谢你帮助我，”她伸出手说道。

　その差し出された白い手を見下ろし、おずおずとその手に触れる。指が細く、掌が小さく、華奢でとても温かい、血の通う女の子の手だった。

　俯视伸出来的透白之手，战战兢兢地触碰。手指好细，手掌好小，纤美又非常温暖，是活生生的女孩子的手。

　――助けてくれてありがとう。

　——谢谢你救了我。