"兵法にいわく、
彼を知り己を知らば百戦危うからず。
しかし、未来に多くの時を残す若者が、
日々変わりゆく己を知ることはない。
ゆえに、彼らにとって勝ちは常に危うく、
負けは身近なものである。
「さて、次は囲基で勝負といこうか」
「今度こそ、勝たせてもらうょ」
「……って言っても最近は、
負けることも楽しくてね」
「……いや、そんな顔すんなっての」
「あんたに負けるのが快感になったとか、
そういうことじゃない」
「……負けて悔しいのは変わらないさ」
「ただ、わかったんだ」
「負けの中にこそ、学ぶことが多くある」
「そうして成長できることが楽しいんだ」「それに
「負けが込んだ後の勝利は格別でね」
「あんたの悔しそうな顔を見下ろすのがたまらない」
「や、そんな顔すんなっての」

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