あるところに人参が嫌いな少年がいました。
少年の母は息子に人参を食べてほしいと思い進んで人参の入った料理を作りましたが
少年はなかなか食べてくれません。
好き嫌いが直らないという罪悪感と母の叱咤に疲れた少年は神様にお願いしました。
「神様、どうか僕の人参嫌いをなおしてください。」
次の日の夕食はなんと食器に乗せただけの人参でした。溜まりかねて少年は言いました。
「どうして夕食がにんじんだけなの？」すると母は
「何を言ってるの？今日はあなたの大好物のハンバーグよ」
母の言葉を理解できぬまま無心でその人参を食べた少年は驚きました。
人参の見た目をしたそれはハンバーグの味だったのです。
少年は神様が願いを叶えてくれたのだと喜びました。
人参の見た目をした食べ物にも慣れた数日後の夕食を食べた少年でしたが
その日の夕食は食べたことのない、しかしおいしいと思える何かでした。それを見た母は大喜びで
「うれしいわ。あなた人参が食べられるようになったのね」と言いました。
少年はいつの間にか人参の形をした食べ物を人参とさえ認識しなくなっていたのです。

翌朝母の言葉でベッドから起きた少年の目の前には、自分の身長以上の大きな
人参が立っていました。
どんな味がするんだろう？と少年は人参を一口食べてみると、大好物のハンバーグ
以上の味がしました。
人参をたいらげてすっかり満腹になった少年が台所へ行くと、椅子に座って新聞を広げる人参が一言


「おはよう。ママはまだおまえの部屋にいるのかい？」